その瞳に映るのは 2【ハイキュー】 (ページ3)

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「俺、狼だよ」

耳元で囁かれた声
ズルズルと床に座り込んだAは、『待って…！』と止めようとするが、いとも容易くがっちり腕を掴まれており、ビクともしなかった

「食べちゃおっかなー」

何度も耳元で囁かれ、体を反応させ、小さく震えていて、まるで捉えられた小動物のようだ
黒尾を見つめるその目は、光に照らされてキラキラとしていた

『黒尾先輩…』

と声を出すが、ギュッとまた手首を掴まれる
そして近寄ってくる綺麗な顔
微かに赤色が混じっているその瞳には、いつもは優しいが今日は何だか別人のようで、まさに狼のような目
何も出来ず、目をぎゅっと瞑り事がすぎるのを待つ

『っ……いて！』

数秒後にきたおでこの衝撃で、素っ頓狂な声を上げたA
目を開けると、はァとため息をついている黒尾

「ダメでしょ、ムボービなAちゃん。」

『どういうこと？』

「こんな夜遅くに出歩くなんて、無防備にもほどがあります。こういう狼沢山いるから気をつけないと」

お手本をしてやったと、フッと笑い、手を差し伸べられ、立ち上がる。その瞬間今のは演技だったのかと悟り、Aの顔が真っ赤に染った

『く、黒尾先輩のばか！！心臓飛び出るかと思った！』

「いやー、俺も喉乾いて食堂いったらちょうどAちゃんいてさ、せっかくだからイタズラしようと思ってさ」

ヘラヘラ笑いながら階段を上がる黒尾の背中を見て、良かったと少し安心した

『いや、ほんとにイタズラのレベルが過ぎてます！昨日心霊番組見てたのも知ってますよね？死ぬかと思いました。しかも狼って！！』

「人狼ゲーム俺、狼だったじゃん？」

『いや引きずりすぎ！』

「悪い、つい反応よくて」

どこまでも呑気な黒尾
部屋の前に着くと、楽しかったーと笑いながら、おやすみと手を振ってくる

『お、おやすみなさい！』

未だに顔が赤く心臓がバクバクしている
黒尾に言い捨て、部屋に入り襖を閉じると直ぐに床へ座り込んだ

『え～…心拍数やばい、いや、怖かった怖かったからか？先輩のあの顔ズルすぎ…』

月明かりに照らされた獲物を捉えたその目を何回も思い出して
握られた手首を触り、顔を埋めた

遊び心満天なひとつ上の先輩
いつも優しく寄り添ってくれたが、今日の一変したギャップに心は高鳴っていた

一方男子部屋に戻った黒尾は満足そうに、布団に潜り込んだ
あのひ弱な表情もいいね、とキモイことを考えニヤニヤしたが、直ぐに眠りに落ちた