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よく寝たと欠伸をして改札を通れば、外の景色は真っ暗で涼しい風が吹くと、後ろから名前が呼ばれる

『黒尾先輩、なんでここに?』

何故自分の最寄り駅にいるのだろうか、不思議そうに見ていると隣へと並んできた

「あんなフラフラだったら心配するだろ、送ってく」

『え、悪いです。もう眠気覚めましたし』

申し訳なさそうに眉を下げて大丈夫だと言うが、もう降りたし行くぞとAの前を歩きだし、有難く送って貰うことにした

『私ずっと寝てましたよね』

「うん、俺の肩の上で気持ちよさそうに寝てました」

『げっ!』

肩を借りていたことを初めて知るAは、顔をひきつらせて
失礼な声を上げ、「なんで嫌そうなんだよ」と不服そう言った

『だって、お金取られそう』

「お前、ほんと言うようになったな。金とるぞ」

『アハハ、そういうとこ!』

冗談を交えながら、歩く歩道
静かな街並みで、夏風に吹かれ木々が鳴る
いつも楽しそうに歩くAの横で、黒尾は何か言いたげな表情をしていた

いつも通る通学路にあるケーキ屋を指さして話そうとした時、
「あのさ」と立ち止まった黒尾が口を開いた

『はい』

「木兎とどういう感じ?」

やっと言い出せた言葉だった
初めて会った練習試合後、最近ではよく木兎がAに絡みに行っている。宮城遠征での電話や先程の電話でも

最初は気にしていなかったが、だんだんとAを見るとチラつく木兎の影にすこし嫌悪感を抱いていた

『うーん…仲良くしてくれる先輩…?ですかね』

なんでですか?と首を傾げて、硬い表情をする黒尾に聞けば、「さっきも電話かかってきてた」と言われ、スマホを確認すれば不在着信が残っていた

確かに練習試合後からよく電話をかけてくるようになり、合宿でも話しかけてくれる。でもそれは木兎の性格上誰にでもフレンドリーな面があるからだとAは思っている。最近では白福を含め、池袋に遊びにいったりもしていた

パチパチと目を瞬きさせると、珍しく気まずそうな顔をしてそっぽを向いた黒尾を見て、ん〜〜?と近づき覗き込んでくる

『もしかして…』

「何」

『私の頼りにする先輩の立ち位置盗られそうで心配したとか?』

変化球をぶつけたAに、ガクッと転けそうになる。ちげーよ、そうじゃねーよと言い出そうとした時、嬉しそうに笑ったA

『大丈夫ですよ、私の一番頼りにしてるのは黒尾先輩だけだから』

次はどストレートでくる言葉に、はぁ〜〜…とため息を着くと、『え、間違えたこと言った?』とAは真顔に戻る

「もういーや、早く帰るぞー」

そう歩き出した黒尾の表情はすこし満足げであった

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作者名:ぱるむ | 作成日時:2024年3月20日 6時

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