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「ん、誰かの携帯鳴ってる」
既に日は落ちている電車内で眠りこけているA横に座る夜久が、微かに聞こえる着信音に気がついた
「俺のじゃない」
「Aのじゃない?」
孤爪はスマホでゲームしながら首を降れば、海が見下ろしたAの手にあるスマホの画面が光っている
黒尾もそれを見れば、電話をかけてきた人物名に反応した
「木兎からかよ」
「起こしますか?」
「いや、起きなさそうだしいいだろ。もうすぐAの駅だし」
リエーフを断り、そのままスルーしていると着信が止まった
海で疲れたのか、その後も会話することなくボーッとしていれば、Aの最寄り駅が近づいてきた
座席の端に座り、黒尾の肩に寄りかかっているAを揺すると、眠そうに目を開けた
「次降りる駅だぞ」
『ん、寝ちゃってた』
「家帰って休むんだよ、明日も部活だから」
海の優しい声掛けに、眠気眼を擦り頷けば、席を立ち上がり降り口へ歩いていく
「Aさん、また明日!」
「気をつけて帰れよ、暗いから」
『また明日〜…』
リエーフや夜久に手を振って眠そうな口調でユラユラと電車を降りていくAを大丈夫かと一同は心配そうに見ていた
すると、黒尾も荷物を持って立ち上がり、「研磨先帰ってて」と、一言言うと電車を降りた
「え、黒尾さんも降りたんすか?」
孤爪の横でフガフガと寝ていた山本も目が覚めたのか見当たらない黒尾のことを聞けば、やれやれと夜久が肩を竦めた
「心配なんだろ」
「クロはおせっかいなとこあるから」
面倒見のいい黒尾だから違和感は無いが、リエーフはキョトンとしていて、口を開いた
「黒尾さんってAさんのこと好きなんですかね?」
Aが部活に入ってから、仲良くしている場面も多く、誰もがなんとなく感じていたことを、リエーフは言葉にした
山本は驚いたようにマジか!?とギョッとしている
「んー、どうだろ。まあ何かとAのこと気にしてるからね」
「俺はなんも知らん」
「研磨さんは?」
「別にクロと恋バナなんてしないし、興味ない」
誰からも肯定の言葉を聞けずに、うーん。と首を捻ったリエーフは謎が深まるばかりである
「でも黒尾さん俺には厳しいのに、Aさんには優しいし」
「女子だからじゃない?」
「普段の黒尾さんってクラスの女子とかにどうなんですか?」
聞かれた夜久は腕を組んで思い出すと、「割と仲良いやつは多い」とムカついた顔で言う、海も「誰にでも同じ対応してるな」と賛同するが、ニコリと微笑み一言放った
「Aみたいに尽くしてる子はいないかも」
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作者名:ぱるむ | 作成日時:2024年3月20日 6時