141 第2回東京合宿 終了 ページ42
俺はAちゃんが好きだと自覚はしている
それがいつからかは確信は無いが、初めて会った時から可愛いとは思っていた。ただ容姿に惹かれるだけで好きという感情もない。あいつには彼氏がいたし。
部活に入ってきてすぐ、人見知りのAちゃんの自分にだけ見せてくれる人懐っこさや、素直さにとても優越感を覚えた
慣れてくると部活に一生懸命で、部員とふざけ合う天真爛漫さや明るさが可愛らしく、俺たちに寄り添ってくれるAちゃんが好きになっていた。
だが、薄々感じていた周りの影に嫌気が起きる。彼女に惹かれる男がいるのは当たり前で、人柄がいいため、周りにも気配りや優しさを振りまく。自分にだけだと思っていたが、木兎に抱きしめられていた表情をみて嫉妬心が込み上げた。もしかしたら木兎の事が好きなのではないだろうか。初めて女子に感じる独占欲がこれ程醜い物だとは思わなかった。
「……ぇ……クロ?」
「……あぁすまん」
1時間半バスに乗り、音駒に着いた彼等は帰路に着いていた
孤爪と黒尾がいつものように自宅まで歩いていると、考え事をしていた黒尾に孤爪がしかめっ面で声をかける
「さっきから変だよ」
「しつこいぞ」
珍しく孤爪が黒尾の顔色を伺って言うが、はぁ……とため息を着くだけの黒尾。部活中や試合中あまり神妙な表情を見せない幼なじみが今日はおかしいと孤爪は言うがはぐらかされるだけ
「珍しいね、クロが女子のことで悩むなんて」
は?と黒尾は立ち止まった。薄暗い街灯がならぶ静かな住宅街
Aのことでしょ。とでも言いたげな孤爪が、黙りこくった黒尾を見上げて、少し笑った
「Aが好きなんでしょ。原因は木兎さん」
「なんでそれを」
「見てたらわかる。何年一緒にいると思ってんの」
食い気味で言う孤爪に驚きながらも、ガシガシと頭を搔いて更に大きなため息をつき、思っていることを黒尾は少しづつ話し出した。その間孤爪は黙って聞いていた
「Aは意外と人たらしだしね。慣れると誰にでもあんな感じな気はするけど。クロがそこまで考える意味がよくわからない」
「いや、抱きつかれてんのはやばいだろ」
「木兎さんも物珍しさに近づいているだけかもよ。まあ確かにAは危機管理バカなのかもね。でも今に始まったことじゃないし、クロと二人だけの時にしか見せない顔もあるんじゃない。」
孤爪に言われ、思い返すAの様々な表情
客観的な意見を言われ、考えすぎていた自分にフッと笑いが零れる。孤爪も恋愛は人を変えるな、と心のなかで思い、少し明るい表情になった黒尾がいた
「お前エスパーか?」
「何言ってんの。クロは意外とわかりやすいからね」
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作者名:ぱるむ | 作成日時:2024年3月20日 6時