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「各自終わったら集合なー」
「あれ、Aまだ戻ってこないね」
「ごみ捨てに行ってるはず…」
「そういや木兎は?」
「さっきまでいたけどな、どこ行った?」
裏庭では、ほぼ片付けが終わりまっさらの芝生が広がっている
澤村が烏野一同に声をかけていると、ゾロゾロと集まり出すが、マネージャーのAがもどっておらずか、谷地が心配そうに呟くと、梟谷の木葉が木兎をキョロキョロと探している
「ゴミ捨て場だっけ?俺呼んでくるわ」
「黒尾ー、木兎も見つけたら回収してきて」
音駒のキャプテンである黒尾は、裏庭から校門側にあるゴミ捨て場にAを呼びに歩き出した
校舎沿いを歩き、開けた校門近くの入口へ向かうと見慣れたジャージ姿の彼女が見つかり声をかけようとしたが、目の前の光景に足を止めた
オレンジ色に染まった空気の中で、目の前では木兎と手を握りあっていたAが、次の瞬間木兎の胸の中にボスっと抱き寄せられていた
『……っ木兎さん?何これ』
「んー、充電」
『どういうこと?』
「だって、合宿終わると中々会えなくなんじゃん」
耳元にダイレクトに伝わる木兎の声色は微かに寂しさを含んでいて、しょぼくれモードのように見える
『……宮城と東京じゃないんだから、また会えますよすぐに』
「すぐっていつ」
『知らない』
拗ねた口調で言う木兎に最後は冷たく返すと、プクッと頬をふくらませてさらに拗ねてしまった。その顔を見てAはププッと吹き出し体を離して笑いだした
その様子を校舎の影から見つけてしまった黒尾
普段なら声をかけられるが、どうにも今の雰囲気で声をかけられるような勇気はない。何を話しているかは分からないがかすかに見えるAの表情は笑っていて、心の奥がジリジリと痛み出す
なんで、男に抱きつかれて笑っていられんだよ。木兎のことが好きなのか?ねぇだろ、いや、分かんないか。
ギュッと握りしめた拳、息をするのも忘れていた。
2人は体を離すとやっと歩き出し、黒尾はチッと舌打ちをして、来た道を引き返した
「黒尾、木兎居た?」
「ああ、2人とももうすぐ戻ってくる」
小見が1人で戻ってきた黒尾に聞けば、いつもの口調で手のひらを上げ、音駒の集まりの中へ入っていく
「Aも木兎と一緒?」
「あーうん、それより研磨明日モンスター狩人の新シリーズ発売だろ?」
「そうだけど……。」
急に話題を変えてきた黒尾に長年関わっている孤爪は、不審感を覚えるが、特に聞かず頷いた
そうして会話をしているとふたりが戻ってきて、最後の猫又の締めの挨拶が始まった
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作者名:ぱるむ | 作成日時:2024年3月20日 6時