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───この扉の中は、俺たちが寝てたような暑苦しい教室じゃなくて、色とりどりの花が咲く春の野原になっているんじゃなかろうか。さらにいえば、虹がかかり、蝶やてんとう虫が飛んでいるかもしれない……

「わ、笑い声がパステルカラーだ……」

「どうだ、声だけなのにいい匂いがするだろう」

「合宿中だけの褒美だ、存分に浴びるがいい」

西谷と田中も、静かに目を閉じたまま言った。
犬岡は「なんか犯罪っぽいなー」と思いつつ、叱られるのも嫌なので黙っていた。
そして両手で自身の頬を叩き気合いをいれる

「いいか、練習通り、まずはジェントルマンにノックだぞ!」

「お、おう」

コホンと咳払いした山本が傘を握り直し、まさにノックをしようとした時だった。不意に扉がガラリと開いた

「エッ!?」

扉を開けたのは、白いTシャツにショートパンツ姿の森然高校のマネージャーだった。ポッキーを片手にいぶかしげな顔をした

「……さっきから傘もって何してるんですか?ええとそのアタマは音駒と烏野の人?」

うろたえる山本を見て西谷が叫ぶ

「お前はここへなにをしに来たんだよ、まずはジェントルマンに自己紹介だ!」

「そうだった……お、俺は、いや、ワタクシは音駒高校2年の山本で、あの、朝はパスタが茹で上がる前にコーヒー豆をアレしてブラックコーヒーをたしなむ男で……」

山本が目を泳がせながら自分の紳士像を喋りだした時だった

『あれー、この声は虎?』

大滝の後ろからヒョコッと顔を出した女子がいた。白いTシャツを着てグレーのショートパンツを履いているため、白い肌が目立っている音駒高校マネージャーAだった

「あば……!!!」

謎のうめき声をだし、バンッと傘を開いた山本とその後ろにいるふたりは目を涙を浮かべなにか念仏を唱え始めた

『え、なにこれ烏野の面白いふたりも居る!』

目の前の状況を見てケタケタと笑っているA
その横では大滝が未だに怪訝な顔をして見下ろしている
3人の後ろでは犬岡が突っ立っていて、すみませんと頭を下げだした

「ご、ごめんなさい!怪しいことしてるわけじゃなくて、ただ仲良くなりたいだけらしいです……!」

「お、おい、言うなよ犬岡!紳士じゃなくなるだろ……!」

焦り始める山本、不可解な烏野二人を見てAはさらに笑って

『皆同級生だし気安く来てくれればいいのに、私も話しかけに行くね』

とイケメン発言をするため、ダバダバと更なる涙を流し始めた。そしてその後教室の奥から現れた清水によって扉が閉められ、4人の作戦は終わった

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作者名:ぱるむ | 作成日時:2024年3月20日 6時

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