113 ページ14
「いいか、大切なのは力まず、自然に話しかけることからだ！」
田中が満足そうに見上げた黒板には、たった2文字「女子」と書かれていた。その横にはいつの間にか西谷も参加していて仁王立ちをしている
「いきなりハードル高ぇ！」
教室前方の騒がしさに、布団に寝そべっていた縁下が「自分ができないことを、ぬけぬけと…」と思わず口を挟んだが、田中は無視して、口を開いた
「…落ち着いてよく聞け、虎よ。まず、生きとし生けるものの頂点に、我が潔子さんがいるだろう？女神ただひとり！もはや、女子も男子もミミズもオケラも関係ない！トップオブ生物である潔子さん以外の生き物に、いったいなにをひるむことがあろうか！」
田中の暴論に、山本が素直に目から鱗が落ちました！という顔をする。そして西谷も涙ながらに言った。
「もしかして…誰もが潔子さんを頂点と奉ることで、この世界に真の平和と平等が訪れるんじゃないのか！？」
「その通り！これぞ宇宙の真理！もはやそんじゃそこらの女子に緊張などしている場合ではないぞ、虎よ！」
なにやら順繰りに熱く叫びあい、黒板の前で「潔子さんを敬うダンス」など踊りはじめた3人を、犬岡が「この人たちなんか楽しそうで羨ましいなー」という顔で見ていた。
「なんの宗教だよ。ていうか、ふたりともやっちゃんが来た時めちゃくちゃ緊張して固まっていたくせに…」
田中達の騒がしさに眉をひそめていた月島と山口も、新マネ谷地を遠くから猫のように眺めていたふたりを思い出してしみじみと頷いた
「ところで虎よ、その具体的な相手とは誰なのだね？」
「…そ、それは」
「Aさんですよね！」
女子と聞いたが、まず序盤の女子の部類にもよるため田中が踊りを止め、山本に聞けばモジモジとオカマ地味だ動きをしていて答えようとした時、犬岡に言われてしまった
そして先程まで堂々と胸を張っていた田中、西谷はピシッと体を固め、膝から崩れ落ちた
「お、おい！どうした龍……！！」
「忘れていたぜ……お前ら音駒マネージャーのことを……！あの神秘的な美しさはまさに潔子さんに共通するものがある！！ってか、最近人気のアイドルグループに似たような子いたよな」
「ああ、あのドッキリとかによく出てくる子だよな……！確かに似てる！！」
「すまない虎よ、今更だが女子のレベルが高すぎるようだ…」
「俺もまだ話しかけれていない……」
目から涙をうかべ何も無い天井を2人は祈るように見上げ、山本はええええー！と声を上げた
さらに騒がしくなった教室前方縁下が疲れきった顔で時計を見上げた
「キャプテンたち、早く帰ってこないかな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 235人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱるむ | 作成日時：2024年3月20日 6時
