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練習が終わり、合宿一日目の夜
烏野高校の面々がゴロゴロと転がっていた。主将の澤村と菅原は風呂場で黒尾達と会い、雑談交じりで音駒の部屋へ移動していて不在。大男たちがそれぞれ雑誌を読んだり、虫刺されの跡をかいたり、携帯を見たりしている時
───ゴンッ！ゴンッ！
やけにうるさいノックの音が教室に響いた
「ん？なんだ？」
部員たちが顔を上げ、件の扉を見る
そして間もなく大声が響く
「頼もー！」
空気を震わせるような声に、寝そべっていた烏野部員たちが顔を顰めた。開いた扉の向こうに現れたのは、音駒高校山本猛虎だった。
「おう、虎よ、どうした！」
読んでいた漫画を放り投げて田中が起き上がる。
山本は思いつめたような顔をして、教室の中を睨むだけだ
その山本の後ろには明らかに無理やり連れてこられたといった様子の犬岡がオドオドと立ち尽くしている
「どうしたシティーボーイズ諸君、道場破りは受けて立つぞ？」
冗談めかして田中が行った時、山本がガバリとひざまずき、床に額をこすりつけた。
「ど、どうしたら、その、じょ…女子と話せるのか、教えてくださいッ！！！」
「ちょ、ちょっと猛虎さん、土下座ですか！？」
慌てる犬岡に、山本が声を荒らげる。
「犬岡！お前だって女子ともっと話したいだろ！！」
「え？あ、それは、ハイ…」
なぜかニヤける犬岡のTシャツを引っ張ると、どちらかといえば穏便派の犬岡もペタリと床に座る
「お、お前ら、そこまで…」
女子マネに対する執念、そして渇望に思わず後ずさった田中だったが、山本の必死な表情を見ていると、ドンッと頼もしく己の胸を叩いて宣言した
「よーし、お前たちの熱い思いはわかった！その件、この俺がなんとかしてやろう！！」
「…こ、心の友よ！」
「ありがとうございます！」
事の発端は、風呂場で山本がいきなり言い出した言葉だった
「入部して4ヶ月、俺はほぼ喋れていない！！」
「いきなAんですか？」
「我が音駒マネージャーだよ、ばか！」
やっと念願の女子マネージャーが入り、感動していたことは言いものの、入ったから、毎日一緒にいるからとて、今まで女子に耐性がない山本は、未だ気楽に会話をしたことがない
「入れることに必死でその後のことを考えてなかったァ…！」
「えー、俺はAさんと普通に喋れますよ？」
「俺はまだ緊張する…」
「Aは誰にでもフランクじゃん…何をそんなに躊躇ってんの…」
リエーフのマウントや孤爪でさえ、山本に理解できないという表情をするため心が折れた
そして心の友である田中に助けを求めに行ったのであった
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作者名：ぱるむ | 作成日時：2024年3月20日 6時
