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森然体育館脇にある芝生の上に腰をかけて話していた
夕食に向かうはずだったが30分程に向かえば間に合うので、ワイワイと声がかすかに聞こえる校舎から離れ夏風に吹かれていた
『研磨とそんなに小さい頃から仲良かったんだ。あの研磨と話すようになったきっかけは?』
「俺んち母親いねえし家誰もいなくなる時あったからそん時よく研磨んち預けられてたんだよ。あん時からゲームばっかでさ〜」
初めて聞く黒尾の家の事情
部活をしていても、黒尾の家族の話や昔の話を聞くことは滅多に無く、驚くことばかりだ
悲しい表情をする訳でもなく、ただ昔を懐かしむ様子の黒尾に対してAが顔色を暗くさせた
「おい、そんな顔すんなよ。両親離婚して、姉と別れて、俺と父親が実家に引っ越してきただけだから」
『え、お姉さんもいたの?!まさかの先輩が弟なの信じられないんだけど』
死別や直接的なトラブルで母親と離れ離れになったわけではなく、少し安心するが新たな情報に目を丸くして身を乗り出し手聞いてきた
「あんまり会ってないけどな、なんでそんな驚いてんだよ」
『弟って言えばリエーフみたいな感じだと印象づいてたし、私の兄の方が先輩より幼稚』
「それは根本の問題なのよ」
顔を見合せて笑い、今度玲於と話してみてと言えば、試合見に来た時なと言われる。恐らく流風は落ち着いて会話が出来そうだが、玲於は1回だけあったが話すうちに面倒臭いことになりそうな気もしてきた
『そういえば先輩が音駒来た理由は?』
「監督だよ、猫又監督がいたから」
そこから幼い頃初めて行ったバレーのクラブで猫又に会ったことや、ネットを下げてもらったことを話した
好きこそ物の上手なれ…普段から黒尾が表立って感情を口にすることはない、が、話を聞いているうちにその時のおかげで黒尾がバレーにハマったんだと理解した
「逆にAちゃんは?」
『音駒の文化祭が豪華だから。中学の頃来たんですけど他の高校より屋台たくさん並んでて自由な感じが凄い好き』
Aらしい単純な答えが返ってきて、やはり年相応の女子高生だと改めて認識させられる。こう毎日バレーづくしだと高校生活もバレーに染まり、他のことが見えなくなる時がある。
「楽しみだな文化祭」
『去年はライブハウスやったから今年は飲食やりたいな〜』
「さては試食で食いまくる気だろ」
いつの間にかバレーのことを忘れ、高校生らしい会話になっていた。この一瞬だけ部員とマネージャーの関係ではなく、ただの男子高校生と女子高生になれた気がした
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作者名:ぱるむ | 作成日時:2024年3月20日 6時