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第二十一話 駄目なものは駄目 ページ24

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「…ごめんね、A」




耳許で小さくそう言った声は先程とは別人のように優しくて、何故だか無性に安心する。





ああ、怪我をしたくらいで治くんがそこまで心配してくれると、何だかとてつもなく幸せに感じてしまう。



やっぱり治くんって、本当に私の事を大切に思ってくれてるんだな、なんて思うと、こんな時でも頬が緩んでしまう。うん、私やばいな。分かってたけど。








「ふふっ、何で治くんが謝るの。私が自分から此処に来ただけで、治くんは何も悪くないよ」




今更ながらも私って愛されてるなあ、なんて思ってしまって、どうも頬が緩みまくってしまう。





「…あ、あと治くん、芥川くんの事これ以上傷つけるのは駄目だよ」


「……何で」




芥川くんの事を話した瞬間物凄い怖い顔になる治くん。先程の天使さはどこ行った。寧ろその表情筋がスゴすぎるよ。そんな所もカッコ可愛いけどさ。



あ、因みにカッコ可愛いというのはカッコいいと可愛いの略だよ。







「駄目なものは駄目」




何かまるで小さな子どもに注意するお母さんのようだが、この際仕方あるまい。



凄い恐い顔をした治くんの額にキスを落とし、蓬髪な頭を優しく撫でて上げる。


少しだけ雰囲気の柔らかくなった治くんにちょっとだけ安堵して、私はそのまま治くんの胸に倒れ込んだ。






「…っ、A!?」



ひどく焦ったような声を出す治くんに私は僅かに笑みを溢し、そろそろ限界だと言わんばかりに目を閉じる。





「…ごめん…ね、ちょっと……限…界…」



重くなっていく瞼に逆らう事なく、私は目を閉じた。



意識を失う前に感じたのは確かな浮遊感と、大好きな人の温かい温もりだった。



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第二十二話 最悪な目覚め→←第二十話 大きな激情



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黒猫もふお - 神作品を発見してしまった……これが現実だったらいいのに……… (8月3日 11時) (レス) @page45 id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
梅林 - 物語も面白いし、何より、え、もう太宰さんが可愛すぎてこっちが可笑しくなりそうでした。本当にもう泣きそうなくらい可愛かったです!!これが現実では無いと思うとめっちゃ悔しくなります(;o;) (2020年2月27日 2時) (レス) id: 837f5e2707 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 真菜さん» コメントありがとうございます!そんな風に思って下さってるなんて…!もう嬉し過ぎて涙が出ます!!(泣)本当に有難うございます!!これからも頑張らせて頂きます!! (2019年7月14日 16時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
真菜(プロフ) - とても面白くて、大袈裟に感じるかもしれませんが、これを楽しみに毎日過ごしてます!リメイク版も楽しみにしているので、自分のペースで頑張ってください!!! (2019年7月14日 16時) (レス) id: ef2b815640 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 東雲 祀さん» コメントありがとうございます!太宰さん可愛いですよね(笑)。楽しみにして下さって本当に有難うございます!!これからも頑張らせて頂きますね! (2019年6月29日 18時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年5月21日 14時

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