第十九話 憎悪の念 ページ22
.
襲いくる羅生門を避けては避けてを繰り返している私。
そして当たらない攻撃に苛々を募らせていく芥川くん。
まさに修羅場だ。
この状況は非常にまずいぞ。まずこんなのずっと続けてたら私の体力がもたない。
「…あ、芥川くん!ちょっ、ちょっと一旦落ち着こう?」
ずっと避けてるとだんだん動きも慣れてきて余裕がでてきた。
いや、この世界の私の身体能力前世より圧倒的に高いからね。やっぱ私って結構チートだよね。今更だけど。
「黙れ…!!何故貴様のような奴がっ…太宰さんの隣に立っている!?」
「…っい"っ…!?」
壁に追い詰められた瞬間、今までで一番鋭い動きで私の横腹を噛み付いてきた。
避けきれず直に受けた私は、今まで感じた事もない激痛に思わず顔を盛大に歪めてしまう。
体中から冷や汗が噴き出して、私は必死に痛みを抑えるように口を引き結ぶ。
これはマジでヤバい。てか痛みで動けないよ。
今私屈んで横腹抑えてる状況だけど、今の芥川くんは多分私が見えていない。
ただ溢れんばかりの憎悪と殺気を放っている。
でもどうしてだろうか。目は凄く寂しそうなんだ。一人暗闇に取り残された小さな子どものように、孤独に苛まれている。
ただこんな風でしか感情の表し方を知らなくて、本当は心の底で泣いているんじゃないかって。根拠もないのに何故かそう思った。
私は画面越しでしか芥川くんを知らない。その内に抱える闇も、私は全然知らない。
此方の世界に来てから思った事がある。
この世界のキャラ達は皆、何かしら闇を抱えている。画面越しでしか見た事のなかった私には、到底理解できないものだ。
目の前に迫り来る黒獣を見た時、不意に治くんの顔が浮かんだ。
もし私が死んでしまったら、彼を一人にしてしまうんじゃないかと。治くんが悲しむ姿は見たくないなあ、なんて縁起の無い事を考えてしまった。
こんなとこで死ぬつもりなんてさらさら無いけどね。
その時、声がした。
「…何をしているんだい?」
それは今私が現在進行形で考えていた人物だったけど、その声は地を這うように低くて私は瞬間的に悟った。
いや、最早長年付き合ってきた本能というべきか。
これは本気でキレてらっしゃる、と。
.
2125人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒猫もふお - 神作品を発見してしまった……これが現実だったらいいのに……… (8月3日 11時) (レス) @page45 id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
梅林 - 物語も面白いし、何より、え、もう太宰さんが可愛すぎてこっちが可笑しくなりそうでした。本当にもう泣きそうなくらい可愛かったです!!これが現実では無いと思うとめっちゃ悔しくなります(;o;) (2020年2月27日 2時) (レス) id: 837f5e2707 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 真菜さん» コメントありがとうございます!そんな風に思って下さってるなんて…!もう嬉し過ぎて涙が出ます!!(泣)本当に有難うございます!!これからも頑張らせて頂きます!! (2019年7月14日 16時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
真菜(プロフ) - とても面白くて、大袈裟に感じるかもしれませんが、これを楽しみに毎日過ごしてます!リメイク版も楽しみにしているので、自分のペースで頑張ってください!!! (2019年7月14日 16時) (レス) id: ef2b815640 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 東雲 祀さん» コメントありがとうございます!太宰さん可愛いですよね(笑)。楽しみにして下さって本当に有難うございます!!これからも頑張らせて頂きますね! (2019年6月29日 18時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年5月21日 14時