第二十五話 看病 ページ28
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ピピっという音が室内に反響する。
治くんの差し出した体温計を受け取った私は、その数字に目を剥いた。
「…さ、39.4…」
予想以上に高い熱に私は目を見開き静かに驚く。いや39って普通にヤバい。私でもそこまでの熱は出た事ないよ。
何か今思ったけど、治くんって普段風邪とか全然引かない代わりにある日どっと押し寄せて高熱とか出すタイプだ。うん、今確信したよ。
頬を朱色に染めながらボーッとしている治くんは、何かいつもより幼い子供のようで恐ろしく可愛い。いやもう可愛いが過ぎる。
とはいえこのままではまずい。正直言うなら病院に行って薬を貰いたい所なのだけど、この状態じゃいけないだろうしまず嫌がるだろうしなあ。
という考えから、治くんは勿論私も今日は休みにしてもらった。つまり今日は私が一日中付きっきりで治くんを看病するわけだ。
まるで少女漫画のようだ、と思ってしまったのは仕方がない。
「治くん、何か食べやすい物作るから大人しく寝ててね」
そう言って母が子どもに言い聞かせるように頭を撫でて上げる。
因みに今の治くんは片目を覆う包帯は勿論全身の包帯を外している。こんな熱が出ているのにあんな暑苦しい格好をしている訳にはさすがにいかないだろうし。
額には冷えピタが貼ってあり、布団もちゃんと肩まで掛けさせている。今日一日は確実に安静にしてもらわないといけないし。
台所に向かおうと背を向けて足を踏み出す。その時、服の裾を後ろから控え目に引っ張られた。
それに思わず驚いて振り返れば、私の事を不安げに見つめる治くんが私の服の裾を引っ張っていた。
「…A、」
「……仕方ないなあ。ふふっ、ずっと一緒に居るよ。だからそんな不安そうな顔しないで…?」
優しく頭を撫でて言えば、気持ち良さげに目を細めて安心したような顔をする。
もう本当に可愛いなあ治くんは。尊すぎて私の身がもたないよ。
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黒猫もふお - 神作品を発見してしまった……これが現実だったらいいのに……… (8月3日 11時) (レス) @page45 id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
梅林 - 物語も面白いし、何より、え、もう太宰さんが可愛すぎてこっちが可笑しくなりそうでした。本当にもう泣きそうなくらい可愛かったです!!これが現実では無いと思うとめっちゃ悔しくなります(;o;) (2020年2月27日 2時) (レス) id: 837f5e2707 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 真菜さん» コメントありがとうございます!そんな風に思って下さってるなんて…!もう嬉し過ぎて涙が出ます!!(泣)本当に有難うございます!!これからも頑張らせて頂きます!! (2019年7月14日 16時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
真菜(プロフ) - とても面白くて、大袈裟に感じるかもしれませんが、これを楽しみに毎日過ごしてます!リメイク版も楽しみにしているので、自分のペースで頑張ってください!!! (2019年7月14日 16時) (レス) id: ef2b815640 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 東雲 祀さん» コメントありがとうございます!太宰さん可愛いですよね(笑)。楽しみにして下さって本当に有難うございます!!これからも頑張らせて頂きますね! (2019年6月29日 18時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年5月21日 14時