▽ ページ17
.
逸る気持ちを抑えると、改めて気合いを入れ直す。
「や、やややややめなさーい！親御さんが泣いてるよ！」
近くにあった紙を丸めてスピーカー代わりに使う敦君は、何とも不恰好で足も生まれたての小鹿のように震えている。
その上初っぱなからの台詞が色々と突っ込み所が多すぎて、私は思わず頬を引き吊らせた。
「な、何だアンタっ！」
青年の怒号に大袈裟に体を跳ねさせる敦君に内心苦笑が洩れるも、しっかりと青年を見据える。
「私達は騒ぎを聞きつけてやって来た一般市民です」
「いい生きていれば好いことあるよ！」
私の言葉に続いて言った敦君は、体を震えさせて顔は恐怖に染まっている。言っている事も何だか少しずれている。
「誰だか知らないが、無責任に云うな！皆死ねば良いンだ！」
爆弾のスイッチの釦を押さえながら吐き出すように放たれた言葉に、思わず眉間に皺が寄り目を細めた。
隣でワナワナと震えていた敦君は、次の瞬間勢いよく喋り出す。
「ぼ、僕なんか家族も友達も居なくて、この前その院さえ追い出されて……でもそんな僕をAちゃんは友達だと言ってくれて…」
最早何を言ってるんだという顔をする青年に、敦君は諦めずに喋り続ける。
「害獣に変身しちゃうらしくて、軍警にバレたら多分縛り首だし、とりたてて特技も長所も無いし誰が見ても社会のゴミだけど、ヤケにならずに生きてるんだ！だだだだから」
自分のあまりにも重い人生を熱弁している敦君の気迫に、爆弾魔の青年は唖然と見つめジリジリと後退った。
その光景を私はじっと見据える。
「虫ケラだって生きている！」
「ええ…」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 215人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
水瀬月鏡(プロフ) - †NANA†さん» 読み方は「おったかァ」なので合ってますよ！ (2019年12月19日 20時) (
レス) id: f1ccb69dff (このIDを非表示/違反報告)
†NANA†(プロフ) - ページ10で、「居たかァ」が「居ったかァ」になっています。 (2019年12月19日 17時) (レス) id: 9d78a5537a (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - いえいえ！わざわざ疑問点を指摘して下さって寧ろ嬉しいです！何か疑問に思った事や可笑しいと思った点があればいつでも遠慮なさらず言って下さい。私も気づかない間に間違っている事もあると思いますので (2019年5月1日 21時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
とまと。 - 水瀬月鏡さん» なるほど！作者様な考えがあったからなのですね！知らずに出しゃばってしまい失礼しました。 (2019年5月1日 20時) (レス) id: 9caa233366 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - コメントありがとうございます！そう言って貰えてとても光栄です！タイトルの件は、大字は［壱］から始まり二番目が［弐］となります。私の場合は第一章はまだ序章であり、探偵社の入社試験から本編が始まるという感覚なので［壱］を使わせて貰いました (2019年5月1日 12時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時：2019年4月20日 10時
