55話 ページ5
＊
「ちょっと待てよ、埒が明かねェ。俺はそこの脳無を取りに来ただけなんだ」
ふう、と乱れた息を整えながら荼毘はAから距離をとった。
楽しい。
楽しいが、このままでは応援が駆けつけ荼毘は一気に不利になるだろう。まだAと遊びたいと思う気持ちを押さえつけて、荼毘は個性をその手に纏う。
ゲェとわかりやすく顔を顰めたAに荼毘はクツクツと愉快そうに声を出した。
悪いな、相棒。
でも俺たちはライバルなんだから、妥協しちゃあいけないだろ。
エンデヴァーを背に、構えたホークスとAへと荼毘は駆ける。
そこに空からミルコが降ってきた。
「ニュース見て"跳んで"きたぜ！面白ぇことになってんなおまえら！！」
荼毘とAは揃ってシラケた顔をする。
「てめェ連合だな！蹴っ飛ばす！」
「ミルコ…！？ったく、いいとこだったのに」
これ以上は危険だと判断し、荼毘は撤退を選択した。氏子さんと呼ぶと、荼毘の口から黒いヘドロが溢れ出る。
Aは神野のときに爆豪と敵連合がワープしたヘドロだと理解した。
「また今度な、ナンバーワンヒーローさんよ。また話せる機会が来るだろうその時まで……」
荼毘の体がヘドロに飲み込まれていく。
動けないエンデヴァーは地面に這い蹲ることしかできない。
「精々頑張れ、死ぬんじゃねえぞ轟炎司！！」
最後に荼毘はニッと笑った。
「今話してけ」とミルコが左足で蹴りをいれるが、その前に荼毘は消えた。
・
残党兵がいないか周囲を見回しながらAの心は浮かれきっていた。
あいつ、帰る間際に指を2本立てやがった。
「んふ」声が漏れないように左手で口を抑える。
ホークスたちは煽られたとしか捉えなかっただろうが、燈矢とAにとってはただのピースじゃない。
子供の頃、告げられたルールを破って双子はこっそりと個性の訓練を行っていた。
Aがバカをして指を失ってからは2人とも慎重になり、訓練の前に必ず3つの決まりごとを確認していた。
ひとつひとつ指を立てて復唱しながら燈矢とAは自分たちだけのルールを守った。
1、個性の訓練はひとりずつ。2、手当はきちんとする。3、タゴンムヨウ。
ビルボードチャートでAが発信したピースサインは正しい意味で届けたい相手に伝わっていたようだ。
片割れが昔の約束を覚えていたことに、Aはふくふくと生まれる幸福が自身の心を満たしていくのを感じた。
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緑猫(プロフ) - さぶろうたこさん» コメントありがとうございます！またまた褒め上手な方がいらっしゃいましたね、、とっても嬉しいです！今読み返すと目を背けたくなるような文章が多くあるので、今後の糧にしていきます笑 (2022年3月16日 23時) (
レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
さぶろうたこ(プロフ) - ハートを付けに来たら、気づいたら一気読みして読み終わってました。。ほんとにこの2人の関係性スッッキです！文も綺麗で…最後の方とかあぁ終わっちゃう〜って思いながら読んでました笑ほんと好きです！ありがとうございます🙇♂️ (2022年3月15日 21時) (レス) @page50 id: a822d640f3 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - 作さん» コメントありがとうございます！書いちゃいました…照 こちらこそ、読んでいただきありがとうございます！ (2021年10月12日 18時) (レス) id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
作 - え………え？！？！そのネタ来ちゃいます？！女体化とか…好き……書いてくれてありがとうございます！！！！！ (2021年10月11日 22時) (レス) id: e1fc2cd2b3 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫(プロフ) - 朝陽さん» 返信遅れてすみません！コメントありがとうございます！嬉しいお言葉です…完っ全に癖(へき)丸出しなので、朝陽さんとは良く語れそうです…笑 思いついたら書いていきますので、ゆっくりお待ちいただければと思います！ (2021年10月6日 22時) (レス) @page34 id: dd1c3e784a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2021年9月22日 0時
