検索窓
今日:16 hit、昨日:2 hit、合計:626 hit

No.317 ページ9

.

C組の、一番後ろの端っこの席に座る私たち。
「アイン、レク係やると思ったんだけどなー」と和葉がため息をついた。

「私もあいつが班長だなんて想像つかないや、でも男気(おとこぎ)ジャンケンで一人勝ちしてたからさ…」

男気ジャンケンって言うのは、普通のジャンケンと勝ち負けが逆転していて、勝った方が負けになるジャンケン。

どの辺が男気かというと、強いて言うなら勝った人は喜んで、負けた人は悔しがらなきゃいけないところかな。

誰もやりたくない班長を賭けた戦いで、みんなチョキを出して、アインだけグーだったんだけどね。
アインは勝ってしまったから班長になったんだけど、喜ばなきゃいけないルールだから「ヨッシャー!」を連呼。私たちは班長にならずにすんでホッとしてるけど、悔しがらなきゃいけないルールだから「仕方なく譲るよ」「次こそは勝つ!」とか言ってアインを煽てたんだ。

ジャン負けで嫌な役に決まるより、男気ジャンケンで勝ってその役を引き受ける方が後味悪くならなくて済むから、北見中学校ではこのジャンケンが結構盛んに行われている。

「そっちの班は誰がなんの係なの?」

「あたしのところはねー…そうちゃんが班長で、美江ちゃんが保健係で、しーくんが記録係!」

「ええ、しーくんが記録?似合わない!」

言ってから思ったけど、どの係も似合わないな、しーくん。

「でしょー、あたしも似合わないなって思ってレク係譲ろうとしたの。でもね、頑なに記録係がいいって言うからなんでかなって思ったんだけど…その答えがさっき分かっちゃった!」

「え!なになに!」

ところが和葉は満足そうに笑うだけで、「内緒っ」と教えてくれない。そこまで言ったんだから聞かせて欲しいもんだ。

その時だった。

そこにいた誰よりも元気な声がして、賑やかな女の子たちの集団がC組にやってきた。その中心に、朱色のサイドテールを揺らした笑顔の眩しい子。

…私は咄嗟に和葉の背に隠れ、机に突っ伏した。
「え、恵林?」と驚いた和葉が耳打ちしてくる。

次第に心臓がバックンバックン唸り始めて、頭の中にけたたましい警報音が鳴り響いた。サーっと血の気が引いていき、体も震えてくる。

「どうしたの、恵林大丈夫?お腹痛い?」

「違う、あの子……」

和葉は私の視線の先にいた少女を見つけて、「穂乃果(ほのか)がどうかしたの?」と彼女の名を呼んだ。



「_____喧嘩中なの。」




.

No.318→←No.316



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (5 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
15人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます! (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2023年8月2日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。