No.316 ページ8
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里奈は「それなら…」とまたペラペラページを捲っていく。
「ここなんてどうかな」
どどんと見開きを贅沢に使った緑。
綺麗なお寺だけど、漢字が読めない…。なんとなく里奈に聞くのは気が引けたので「い、いいねえ!」と誤魔化した。
「里奈も行ったことない場所?だったら楽しめるね!」
里奈は私の目をじっと見つめて微笑むと、「うん」と頷く。それなら決まりだね、ここに行こう!
ある程度京都ぶらり旅の予定が決まって、先生にしおりを提出完了。旅館の近くにも大きな池がある公園があったりと、流石日本の都って感じ。
「ここ、夜になると蛍が綺麗みたい、穴場スポットになってる。」
葵は席に着くなりその公園のイメージ画像を眺めながら「旅館の窓からも見えるかも」と付け足した。彼は案外、観光名所とかご当地グルメとかに目がないのだ。
…というか、葵が今見てるガイドブックの下に、京都絶景スポット、初めての京都旅行、電車で巡る京都の町並み……と、王道な雑誌が山のように積み上がっている。どんだけ楽しみにしてるの!?
とまあそんな具合で、その日は計画書を書いて終わった。また少し日が経って、いつもと同じ六時間目。
楽しみにしていた班行動に胸を高鳴らせていると、先生が大声で一言。
「それじゃ、同じ係の人と集まって指定されたクラスに移動してください!」
え!今日はグループ授業じゃないの!?
修学旅行関連の時間ではあるけれど、係別だなんて聞いてないよ!
係の種類は四つ。班長、保健係、記録係、レク係。
大抵は四人班なので、一人一係を必ず受け持つ。今日は係ごとの説明会がある日みたいだ。
班長のアインはA組、保健係の里奈はB組に移動。
「畑中さん、C組でしょ。」と横から座ったままの葵が教えてくれる。私はレク係なのだ。
「葵は?」
「記録係はここだよ、D組。」
よく見てみればもう既にぞろぞろと移動が始まっていて、知らない他クラスの記録係たちが次々とD組にやってきている。メガネ比率が高い…真面目なエリート集団って感じ。
それをぼんやり眺めていた時。
「恵林、一緒に行こっ」と突然背中に何かが覆い被さる。
「和葉!和葉もレク係なの?」
「そうだよ!だからはやくーっ」
良かった!和葉が一緒なら一安心。
だーれも知らない中に独りぽつんといるのは耐えられないもの。
私は葵に「またね」と手を振って和葉と一緒に教室を出た。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます! (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2023年8月2日 23時