No.353 ページ48
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「あ〜、早く修也様のところに帰りたいなあ」
ぷらぷらと足を揺らして夜空を見上げるしずく。おんぶしている恵林としては、正直なところじっとしていて欲しい。
「なんでそんなにあの人が好きなの？」と、興味本位できいてみる。
「えー、だって、カワリモノじゃないですか！ボク以外にあの人のことを心から愛せる人なんて誰もいません！ボクが全て許してあげる代わりに、ボクのこと一番にしてもらうのです。」
彼女はまた何かを代償に特別を得ようとしている。それに気づいているのか、はたまた強がっているだけなのか。
「しずくちゃんが何かしないと、修也さんはしずくちゃんのこと一番にしてくれないの？」
しずくはぷつんと糸が切れたように黙り込むと、一拍置いて「イヤなこと聞きますね〜、性格悪〜」と恵林の頬を再度引っ張った。
「なにかあげるから、なにか貰えた。…それが単純明快でいいじゃないですか。」
背中にへばりつくようにして抱きつくしずくに、恵林は「うーん」と唸る。
「よく分からないけど、修也さんもけいとくんも…他のお友達も、しずくちゃんが何かあげようとしなくたってくれるものもあると思うよ。」
「そうやって貰ったものの方が、特別感ない？」と、恵林はふにゃりと笑った。
しずくは押し黙る。欲しいものがあればそれに見合ったなにかを先に支払うべきだと考えていた。そうでなきゃ「もらえた」という認識に変わらない。突然くれたものがしずくの欲しいものなのか別のものなのか、どうしたら見分けがつくだろうか。
「たとえば」と、恵林は立ち止まった。
「今、私がしずくちゃんのことおんぶして運んでるのだって、私がしずくちゃんになにかしてあげたいって思ったからだよ。」
ぼんやり、耳を澄ませるしずく。聞き心地のいい声がする。
「助けてって言葉、ちゃんと受け取ったよ。だからしずくちゃんのこと、助けるって決めた。」
「恵林センパイ…」と、しずくは恵林の肩に顔を埋める。青いリボンで結ばれたポニーテールがふさふさと顔にかかった。
「汗臭いデス」
「はあ！？今いい話してたのに！」
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (
レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます！ (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年8月2日 23時
