No.350 ページ45
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「それってつまり……」と言いかけて、「つまり、なんだ？」と首を傾げる恵林。しずくは呆れるようにため息をついた。
「修也様はボクのことを見てくれているようで違います。お母さんもお父さんも、ボクを一番に思ってくれているわけではありません。」
錦鯉の泳ぐ光る水面を眺めながら、ぽつぽつと話し出したしずく。
「野嶋くんたちに嫌がらせをしてみても、お友達の一番には、ボクはなれなかったような気がします。そこで考えました。みんなから大切にされているアナタが大切にしている誰かの一番になってみたい！」
恵林は頭がこんがらがりそうになって「でも、待って！」と振り返る。
「けいとくんは？あの子は誰よりもしずくちゃんのことを思っているよ。お父さんやお母さん、お友達、その誰よりもしずくちゃんのことを大切にしているよ！」
「しずくちゃんは、けいとくんのこと嫌い？」と、恵林は悲しそうにしずくを見上げた。しずくは恵林の目などこれっぽっちも見ずに「けいとのこと、大切ですよ」と答える。
「なんであの子が大切なのかなってずっと疑問だったんです。それが最近わかりました。けいとはできないことが多くて、人に頼らないとやっていけないからだ。」
「ニンゲンって、他人のこと助けたくなっちゃう本能でも備わってるんですかねぇ」と、淡々と流れるように紡がれるしずくの心の内。それに加えて「だからもう、ボクはあの子を助けないことにしました」と、冷たい言葉が聞こえて恵林はハッと顔を上げた。
「どうしてそんなこと言うの、大切な家族に言っていい言葉じゃないよ！」
「恵林センパイ、ボク以前言ったじゃないですか。」
しずくは恵林の言葉を遮るように言う。
「強くて良い子なシズクはもういらない。たった今、ボクは誰かに助けてもらわなくちゃ死んでしまう、弱くてわがままなケイトになります。そう…これからはボクの番なのです！」
しずくは片足立ちのまま月を見上げてケタケタと笑った。不安定に揺れる体。恵林は胸の詰まる思いが込み上げてきて、上手く口が開かない。適当な言葉が思いつかないのだ。
「もうヒトのために何かするのはやーめた、誰もボクを一番になんかしてくれないもんね。だから恵林センパイ！」
その場にそぐわない明るい声で、しずくは恵林を呼んだ。そこで初めて目が合うと、彼女は本当に楽しそうに笑い、背を向けたまま宙へと傾いていった。
「ボクのこと、助けてくださーい！」
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (
レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます！ (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年8月2日 23時
