No.349 ページ44
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置いていかれないようにしなければ。
しずくは白いワンピースを揺らして恵林を追いかけると、「どんな思い出ですか！」と息を切らしながらきいた。
「ここには秘密基地があって、夏はみんなで花火をするんだ。」
「今年もしたのですか」
「うん！その時、私の誕生日を祝ってもらったの！」
しずくはまじまじと恵林の顔を覗く。そして辺りを見渡して大きな橋を見つけると、恵林よりも先にそこへ辿り着きたくて再び駆け出した。橋の下には川が広がっていた。月光が水面を煌めかせる。よく見れば赤くて大きな魚が泳いでいる。
「しずくちゃん？」と追いついた恵林が小さな背中に声をかける。
「…知ってますよ、けいとはこの川に飛び込んだ。あなたと一緒に。」
「そうそう！ほぼ無理やり…今思えば申し訳ないことしたね。」
恵林は笑いながら橋から身を乗り出す。「あ、鯉！」と、赤い魚を指さした。
「度胸試しでね、ここから飛び降りる遊びがあるんだ。私最初怖くてさー、全然勇気が出なくて……って、しずくちゃん！？」
ミシッと橋の骨組みが鳴ったと思ったら、恵林の真横にはしずくの足首があった。可愛い花柄のサンダルが光る。彼女は手すり部分に立ち上がると、三日月を背に川の流れを見下ろした。
「ちょっと、危ないよ！」と恵林は慌てふためく。
「あなたに危ないだなんて言われたくないですね〜」と、まるで呟くように言ったしずく。ここから落ちることも、溺れることも、小さなしずくは少しだって怖くない。
＿＿＿＿＿＿しずくが恐れているのは、自分が誰かの特別になれないということだ。
「恵林センパイ、ボクのこと怖いですか？」
静かな声色でしずくは聞いた。恵林からはいつものように、「またそれ！？」と返ってくる。
「ボクが、あなたの大切なヒトの一番になりたいって言ったら、嫌いになりますか？」
静寂が訪れた。チリチリと虫の鳴き声が響いているが、それ以上に空気は、ずっしりと重たい音を耳に運んでくる。
「どういう意味…」と恵林は肩を竦ませる。
「たとえばボクが」と、しずくは片足をぽーんと空中へ投げた。
「ボクが、葵センパイの隣にずっと居るのは嫌ですか？」
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (
レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます！ (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年8月2日 23時
