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雷星羅輝、霆は大河で辻になる。 ページ42

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午後九時過ぎ。
母親の帰宅を待ちながら、恵林は一人でテレビを見ていた。

とても濃い一日であった。懐かしい友人とも話せて、少し肩の荷が降りた気がする。変わりゆくものの中に、確かに変わらないものも存在するのだと気づけたことが一番の成果だ。

恵林はくわっと大きなあくびをした。
修学旅行当日までも、残すところあと3日。着々と進んでいく時間に置いていかれそうになってしまうが、その瞬間を大切にできたらいいなと思う。

その時だった。

「わ!真っ暗!」

プツンと音がしてテレビの電源が切れたと思うと、リビングの電気も一気に消灯したのだ。突然の暗闇に恐怖を感じる恵林。しかしその三秒後には、何事も無かったかのよう明かりが復旧する。

「停電……?」と不審に思っていると、ちょうどいいタイミングでピンポンとチャイムが鳴る。背筋がヒヤリと凍った。
私メリーさん……などという、昔誰かからきいた怖い話を思い返したのだ。

恵林は足音を立てずに玄関まで行くと、小さな覗き窓から外を見る。誰もいない。まさか本当に心霊現象?

「えーりんセンパイ〜」

ヒョッと喉に冷たい空気が入る。扉の外から聞こえるこの声は……

「しずくちゃん……?」と、恵林は恐る恐る玄関ドアを開けた。覗き窓からは見えない足元にしゃがみこんで、しずくはぎょろりと恵林を見上げていた。

「怖っ!な、何してんの!?!?」

「こんばんは、恵林センパァイ。」

にゅっと笑ったしずくはその場で立ち上がり、手首にかけていたビニール袋からお菓子の入った包みを取り出す。そして、「これ、今日のお礼なのです」と、恵林にそれを手渡した。

「お礼……」と、意外な出来事に驚く。

「全ての出来事を、お母さんにお話しました。そしたらお母さんが、ちゃんとお礼しに行きなさいってお菓子をくれました。恵林センパイ、改めてありがとうございます。おかげでスッキリしました!」

なるほど、と頷く恵林。しずくの母親____絢瀬エミは随分と律儀な人のようだ。美人な上に気も配れる…確かに、しずくは母親の血をよく継いでいる気がする。それにしても何故、恵林の自宅の場所を知っていたのだろうか。

「それは良かった、私も役に立てて凄く嬉しい!」

微笑む恵林。しかししずくは「ハイ!」と大きな返事を一つして、じっとこちらを見つめてくるばかりで一向に動かない。

「あ、あの…しずくちゃん、他にも何かある感じ?」と、恵林は苦笑いで遠慮がちにきいた。




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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます! (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2023年8月2日 23時

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