検索窓
今日:36 hit、昨日:2 hit、合計:646 hit

No.343 ページ37

.

「あーん!しーくんセンパイ、男の子たちがボクのこといじめてくるんです〜、やっつけて!」

きゅるきゅると瞳をうるわせたしずくが中村の片腕にひっついた。たちまち男子たちは騒ぎ出す。「ぶりっ子キメェんだよ!やっぱり一発殴ってやる!こっち来い!」と野嶋が戦いの火蓋を切った。

まだやってるよ…と呆れる恵林の横で、「よ〜し」と中村が指を鳴らす。「え!?しーくん!?」と、恵林はギョッとした。

「ちょうど退屈で腹が立ってたところなんだ〜。ガキンチョども、俺が遊んであげるよ。」


_______出た…!緑ヶ崎の産物…!!

恵林は冷や汗をかいた。中村も、乱暴な北見の連中と何ら変わりない。野嶋たちは少し怯み、「だ、誰だお前は!!」と怒鳴る。「この子達は喧嘩吹っかけることしか考えてないの…?」と、背後で微妙な顔をする恵林。

「知らないんですか!無知無能マヌケ野郎!このヒトはナカムラシオン、生徒会長を裏で操るラスボス的な存在です!」

「あのヘナチョコ会長のことか…」と一歩後ずさる野嶋。その場にすら居ないのに、突然巻き込まれる氏橋が可哀想だ。

「てか野嶋くん。好きな子いじめちゃうとか性癖拗らせすぎでしょ〜、うちの生徒会長の方が健全なヘンタイでよっぽど愛嬌あるよ。」

何重にも輪をかけて、やはり氏橋が可哀想だ。
野嶋はもじもじと人差し指をいじる。

「べっつに、好きとかじゃ…ねーし…」

なよなよしている野嶋にため息をついて、突然目の前で「しーちゃん…可愛いね…」と、少女漫画の序盤のような寸劇を始める中村。しずくの顎をくいっと持ち上げ、「俺の彼女にならない?」と口説いてみせた。きゃっと何故か取り巻きの男子たちから黄色い歓声が上がる。

中村はその体制のまま真顔に戻り、野嶋の方へ顔を向けた。

「君の場合、このくらいしなきゃ付き合えないよ。」

「余計なお世話だわ!!!」

しずくはというと少しも表情を変えずに「修也様がいるのでゴメンナサイ」と中村を振った。「あちゃ〜振られちゃった〜」とケラケラ笑って、中村は恵林の元へ戻ってくると、まるで何事も無かったかのように自転車のストッパーを蹴りあげた。

「さ、帰ろう〜」

「えっもういいの?」と恵林は言う。

「うん、あの子らすっかり仲良しじゃん?水差しちゃ悪いしね〜」

中村に言われて彼らを見れば、確かに楽しそうにしている。「ほんとだ、凄いなあ」と、恵林は少し羨ましく思った。



.

No.344→←No.342



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (5 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
15人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます! (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2023年8月2日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。