No.340 ページ34
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「なんでそんなこと選ばねーといけねぇんだよ!」
「僕が退屈だからだよ」
「知らねぇよ!!」
野嶋は頭を掻きむしって地団駄を踏んだ。
「こんな人に告白されたらと思うと悪寒がシマス。」
「奇遇だな!俺だって同じ気持ちだよ!!」
仲悪いな…と、恵林はしずくと野嶋を交互に見た。普段のしずくとは大違いなその態度に、驚きを通り越して呆れが出てくる。きっと彼女は多重人格だ。
「じゃあ高橋に告るー?」と、ライガは野嶋を見上げた。
「好きなんでしょ?高橋サンのこと。」
無邪気なライガの瞳に見つめられ、野嶋は言葉を詰まらせる。ライガはくすくすと笑い、「好きだから意地悪してました、ごめんなさいって言いなよ」と茶化した。
「そんなこと、今更言えるわけねえし…」
……ぴよぴよと鳥が鳴く。
急にヘタレた野嶋に、遠くのベンチでことの行く末を見物していた中村が「ハア?」と、呆れた様子で声を漏らした。散々業の深いことをしておいて、こいつは何故弱気な乙女の顔をするのだ。質の悪い恋愛映画でも鑑賞している気分になって、中村は足を組んで腹立たしげに舌打ちをする。
「告ったところで、嫌われてんの目に見えて分かってるし、泣かれたら嫌だし…」
「これまで何度も泣かせてますもんね」と、しずくが口を挟むと、野嶋はとうとう黙ってしまった。
彼らの話し合いを見守っていた恵林はふとハサミをライガに返して、解けかけていた髪を青いリボンで結び直す。
そして、絢瀬の横に一歩前へ出ると一度長い息を吐いた。
「……ただの嫌な奴のままでいいの?」
恵林はガシッと野嶋の肩を掴む。「いや、だからお前誰……」と野嶋は鬱陶しそうに恵林の方へ振り向いたが、ばっちりと重なった鋭い視線が彼の口を固く閉ざす。
「ただのいじめっ子で終わるより、ちゃんと謝って、ちゃんと気持ち伝えて終わった方が良いと思わないの?」
まるでラムネ瓶の底のような青だ。恵林の瞳に間近で魅せられて、こくんと野嶋は息を飲んだ。
「気持ちは思ってるだけじゃ伝わらないの。ちゃんと言葉にして、届けてあげなくちゃ!」
ハッとして、「いや、でも…」と彼の面が下がっていく。
「でもじゃないよ!せっかく口があるんだから、話して、何度でも繋がればいいんだよ。」
「ね!」と笑った恵林。
少し照れくさそうに、野嶋は「近い!」と乱暴に恵林を追い払った。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます! (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2023年8月2日 23時