No.337 ページ31
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まるで先程とは別人のように頼もしくなった恵林に、中村は唖然とする。というより、自分の出る幕が完全に無くて格好がつかないにも程がある。
「それじゃ切るからね、ホントに切るから！」
刃の先端を長いポニーテールに近づける恵林。「ちょ、ちょ、やめてやめて！」と慌てて中村がハサミの両刃の間に自分の手を差し込む。
「何するの、危ないよしーくん！」
「馬鹿なことしないでよ！恵林の髪がバッサリ切れてるところみたら、みんな泡吹いて倒れちゃうよ！」
「別に長くしたい訳じゃないし、いいもん！」
「俺は長い方が好きだけどね！」
「何見せられてんだ……？」と、男子たちは呆けてその光景を眺めていた。ライガに至っては裁判官であるはずなのに「終わったら教えてー」とその場に寝転びはじめている。
中心から離れた位置で、しずくはスカートの裾をぎゅっと握りしめて俯いていた。
このままでいいのだろうか。しずくはただ友人に笑って欲しかっただけだった。そのためなら手段を選ばず、より残忍に、より惨い方法を選んできた。友人を傷つけた者が傷つく様を見て、あの子に笑って欲しかっただけなのだ。たとえそれが自分に返ってきたって構わない。髪を切られようと腹を裂かれようと、受け入れる強さが自分にはある。
けれど＿＿＿＿＿
「恵林センパイ！」
しずくは叫んだ。
「恵林センパイがボクの代わりになることなんて無いです！第一、アナタはそんなに強くないでしょ。これはボクが始めたことですし、ボクのこと放ってくれていいんです。急に現れてヒーロー気取りしないでください！」
吠えるように言い切ったしずく。その表情は憎むような、怒っているような、苦しい顔だ。
案外けいとに似ている、と、恵林は思った。
「しずくちゃん、私はヒーローになったつもりはない。」と、中村を振り払って言う。
「ただ、私が髪を切ったら、きっとしずくちゃんは気づいてくれる。自分がどれだけのことをしたのか、私の短い髪を見る度に思い出してくれる。」
少しも曲がらない真っ直ぐな眼は、水面のような煌めきを帯びていながらどこか不安定に揺れていた。
「しずくちゃんは私の髪が伸びるまでずっと、何かを抱えて生きていく。私はそれを、罪悪感と呼んでいる。なんのダメージもない罰なんて意味が無い、罰を受ける覚悟があるなら、しっかり苦しんで！」
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (
レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます！ (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年8月2日 23時
