No.312 ページ4
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「ち、違う！俺はやっていないッ！！こんなところに本を差し込んだ記憶なんてない、何かの罠だ！」
美江は唖然として「あんた……」と言葉を失っていた。でも、一年たちはクスクスケラケラ、なーんか怪しい。
「宮野、信じてくれ！こいつら、本当に本を盗もうとしていて、俺が注意したら慌てて返却ボックスに投げ入れたんだ！」
「＿＿＿なら、その本の貸出履歴を見れば分かるんじゃない。」
突如後ろから全て見透かしたような物知り声がして、私たちは振り返る。
「葵！」と私は名探偵のように登場した彼を呼んだ。その横には、助手のワトソンとでも言えそうなけいとくんの姿もある。
「あー！葵センパイ、こいつら毎日僕をいじめてきてウザイんです、やっつけて！」と、けいとくんはそうちゃんを囲う男子軍団をビシッと指さした。
「はあ？いじめてなんかねーよ！」
「ひい！」
けいとくんは光の速さで葵の背に引っ込むと、ぷるぷる震えながらこちらの様子を伺う。けいとくんって、お調子者なのか臆病者なのかよくわかんないな…
「しかし、放課後は図書委員もいない！どうやって調べると言うんだ桐ヶ谷！」
北見中学校の図書室は、図書委員の人しかカウンターに立てない決まりだ。
そうちゃんは自分の身の潔白を今すぐにでも証明したくて慌てていて、「そもそも委員がいない間にどう本を借りるつもりだったんだ！」と一年生に向かって大きな声を出した。図星だったのか、男の子たちは口ごもる。
確かにそうだよね、本の貸出はお昼休みだけって決まっているもん。ならやっぱり、この子達は図書室の本を盗もうとしていたのかなあ。でも一体何故？
「図書委員ならいるよ」
葵はそう言ってスタスタとカウンターの方へ向かう。そしてパソコンを立ち上げるとバーコードリーダーを掲げて一言、「俺」と言った。
「＿＿＿え！？」
思わず声を上げる私。
「葵、図書委員だったの！？てか、委員会とか入ってるように見えないんだけど…」
「委員決めの時、中村が勝手に名簿に俺の名前を書いたんだ。当番の日も行ってない、行きたくなくて。」
うわ！出たよ、強制入会。
そういえば葵、今はもう退部した卓球部もしーくんに勝手に入部届け出されてたよなあ。
葵は返却ボックスの中にあった三冊ほどの文庫本を取り出し「貸して」と、ついでにそうちゃんのズボンのポケットに入っていた本も受け取ると、ピッと裏表紙のバーコードを順番に読み取っていった。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (
レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます！ (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年8月2日 23時
