No.334 ページ27
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No side
「＿＿＿＿＿ねえ、なんか変じゃない？」
少女たちの背中を少し遠くから追いかけていた桐ヶ谷は、横に並んでいる中村にそう耳打ちした。
高塚里奈に支えられて前を歩く恵林。
「ああ変さ、あの二人の関係は初めから変だ。」
中村は里奈をじっと見据える。執着ともいえる恵林への過保護な扱いは、今に始まったことではない。里奈はまるで洗脳しているみたいに、余計な情報を恵林から遮断しているように見える。
「波瀬レイタロウの反応を見る限り、昔からそうなんだろうね。まるで恵林を信仰してるみたい〜」
「信仰？だとしたらあの人は神様をそそのかす天使だ。」
「宗教なんてどこもそうでしょ」と、中村の得意な偏見が飛び出した。
「信者は自分の信じる神様以外要らないんだ。恵林がそのラインから外れないよう、里奈が修正をかけてるんだろうね。」
そう言われればそう見える。いつも静かに恵林の横にくっついていて、周りの収集がつかなくなると口を挟む。今だって真っ先にやってきた。里奈は恵林を何かから遠ざけようとしている。
波瀬レイタロウから？
それとも、恵林と波瀬が話していた昔の思い出から？
「＿＿＿＿＿俺、しずくちゃん追いかけようかな〜」
「え？」と、桐ヶ谷だけでなく恵林や里奈も振り返った。中村は軽く笑い飛ばして、「心配でしょ？ひとりにするのも」と下駄箱へ戻っていく。
「待って、私も行く！」と、青ざめた様子で里奈の腕を振りほどいた恵林が駆け出した。
「恵林、だったら一緒に……」と、里奈が後に続こうとした。けれど恵林はそれを振り切って、「里奈は待ってて！」と真っ直ぐに見つめた。
青い瞳に、きらきらとビー玉のような輝きが再び灯った。
「しずくちゃんのこと、今追いかけなかったらもう一生分かり合えない気がする。」
恵林は強く拳を握る。レイタロウの言葉を思い返していた。理解できないことを理解したい…そう思うことこそ自己中かもしれないが、このまま悲しい雰囲気で終わるのは嫌だと思った。
過去にあった全ての過ちを、何度も何度も後悔してきた。あの時こうすればよかったと思ったその気持ちを、今も尚忘れることなく感じている。
だから今、行動すべきなのだ。
「私は…しずくちゃんのこと、もっとちゃんと知りたいだけ。それで、好きになりたいだけ！」
恵林は運動靴を昇降口前に投げると、上履きを乱暴にしまって外に出た。
残された里奈の背中を、桐ヶ谷は静かに見つめていた。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (
レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます！ (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年8月2日 23時
