検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:612 hit

No.331 ページ24

.


「しーくん、しずくちゃんはね、自分の代わりにしーくんを戦わせようとしてたんだよ。」

さっきしずくちゃんは、直接しーくんに相談しにいくって言って理科室を出ていったはずだ。なのに一緒に帰りたいだなんて嘘をついて、それは彼を騙しているのと同じじゃないのか。

もしかして、ライガはしずくちゃんの嫌がらせをやめさせるために放課後呼び出したんじゃないだろうか。だとしたら、しずくちゃんはそれを力でねじ伏せようとしたってことだよね。

そう考えたら全ての辻褄がある。
ライガは喧嘩なんかしないし、しーくんを騙したのも後ろめたいことがあったから。これが正しければ、しずくちゃんはとんでもないことをしている事になる。

「…恵林センパイ、違いますよ、ボクは…」

しずくちゃんは肩を落として言う。

「ボクはただ、お友達を守りたかっただけです…」

「健気で良い子じゃないかあ〜。やり方もヤバくてオレは好きー!」と、レイちゃんはしずくちゃんの頭を撫でる。しずくちゃんは弱々しく笑った。

多分、初対面のレイちゃんの前だからこんなにしおらしくしているんだ。私と話す時は、もっと強い口調だもの。

「でも、嘘はついてません。しーくんセンパイとだって、本当に一緒に帰りたかったのです。かっこよくて優しいセンパイと帰りたいと思うことはいけないことですか…?」

まるで兎のような瞳だ。
私はしずくちゃんに何も言えなくなって困ってしまった。

「その帰り道の途中で、偶然(・・)出くわした悪い子から守ってもらいたいと思うことは、いけないことですか?」

悪い子?

「…しずくちゃん、ライガのこと本当に悪い子だと思ってるの?」

「ハイ」

「わお」とレイちゃんが笑う。

「だって、ボクのお友達に嫌がらせした男子の仲間ですよ。悪者に完全に勝ってこそのヒーローです。」

「カッコイイ〜!痺れるじゃん!」

レイちゃんは何故か一人で盛り上がっているが、私のもやもやは一層深まるばかりだ。


「…わかんない、しずくちゃんのこと。」と、私は呟いた。




.

No.332→←No.330



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (5 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
15人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます! (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2023年8月2日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。