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No.325 ページ18

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____つまり私は、彼にとってはなんの価値もない邪魔な人間。話したいだなんて微塵も思われてない。


「あ…本当にいた…」と、私は体育館の入口から中を覗いてその姿を発見した。校庭はミンミンうるさい。九月に入っても、まだまだ蝉が元気だ。

「どれ?」と葵が私の横からひょこっと顔を出す。

「ステージの上で笑ってる、おでこが出てる子」

レイちゃんの周りには相も変わらずガラの悪い男の子が揃っている。彼はいつも、学年で一番尖った男の子たちの輪の中にいるから近寄り難い。

思ったそばから頭を引っぱたかれているレイちゃん。でも、叩いた側も叩かれた側も、ゲラゲラ楽しそうに笑っている。

「うわ、北見の産物…」と零す葵。
ああいうヤンキーみたいな乱暴な男の子は、緑ヶ崎出身の子には滅多にいなくて北見にばかり分布している。だから緑ヶ崎の子達はたまに皮肉で、彼らみたいな乱暴者を「北見の産物」なんて言っているのだ。

でも逆に、緑ヶ崎の子は単純な暴力とかが無い代わりに、陰湿ないじめっ子が多いイメージ。同じ市内でも、通っていた学校や住んでいる地区によってこんなに特色が違う。

「仕方ない、あいつを呼ぼう」と、葵は来た道をくるりと戻っていく。「どこいくの!?」と、慌ててついていく私をスルーして、葵はA棟三階にある音楽室にやってきた。

「ここ、吹部の部室…」

中から合奏が聞こえてくる。演奏中だ。
その時、隣の視聴覚室から「あれ〜?」と暇そうな声がしてしーくんが現れた。恐らく全体の練習には、いくらなんでも部外者である彼は参加できないのだろう。

「しーくん!しずくちゃんは?」

「うん?放課後に校門前で待ち合わせしてるよ〜。なんでも、俺と一緒に帰りたいんだって。」

しーくんの話の違和感に、私と葵は顔を見合わせる。
一緒に帰りたい?違うだろう、しずくちゃんは自分の代わりにしーくんを戦わせにいくつもりのはずだ。

「なになに、妬いてくれたの?」と、にこやかなしーくん。可哀想に、何も聞かされてないんだね。

「とにかく来て、中村」と、葵はしーくんの背中を押して階段を下りていく。「は?なに、え?」とキョドりながら、しーくんは成されるがまま体育館に。

「波瀬レイタロウ、分かる?」

葵は先程と何ら変わりなくステージでふざけ合っている男子を指さした。

「ああ、まあ…」と、薄い反応を向けるしーくん。



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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます! (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2023年8月2日 23時

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