No.319 ページ11
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「…え？」
「あたしが恵林のこと守るから、絶対絶対、修学旅行一緒に楽しもうねっ！」
「守るって、別に攻撃されてるわけじゃ…」
「違う、あたしが守るのは恵林の体じゃなくて、ハートだもん！」
「ハート…」と呟く。和葉はにっこりと笑い、「スマイルを忘れるべからず〜！」なんてふざけて私のほっぺをむにゅむにゅ揉んで引っ張り上げた。
「い、いたたたた！」
「あははっ！おりゃおりゃ！」
私の変な顔に一頻り笑うと、一息ついてまた歩き出す和葉。
「覚えてる？保育園の時、恵林ってば毎朝泣いててさ。」
「あ、ちょっとやめてよその話！」と、私は慌てて和葉についていく。小さな頃の、恥ずかしい思い出だ。
「お母さんとお別れする時もピーピーギャーギャー！恵林が泣き止まなくて先生たちが困ってて、そうなったらあたしの出番。」
保育園、嫌いだったなあ。
通っていた期間も短かったし昔のことであんまり覚えてないけど、隣に背の高い赤毛の女の子がいたことは思い出せる。あれがきっと和葉だ。
「積み木もだめ、絵本もだめ、レゴもだめ、色々試して上手くいったのは塗り絵とお絵描きでさー。でも、描くことはあたしが苦手だったから、結局先に飽きちゃって恵林はまた泣いてた。」
うわ、面倒臭い赤ちゃんだな…
「恵林、その後すぐに幼稚園に行っちゃったでしょ？それからあたし保育園が全然楽しくなくなっちゃって。それで気づいたの、誰かの世話焼くことが好きなんだなーって。」
確か和葉には弟がいるはず。根っからの姉御肌なんだろうな。
和葉は頭をかきながら「だから情報屋なんてやってるんだけどねっ！」と笑う。いや、どう考えても紆余曲折し過ぎだろ、何があったんだ。
「とにかく、恵林の脆いハートのことはあたしに任せて！せっかく修学旅行という中学生最大のイベントなのに、悲しいまま終わりたくないでしょ？」
「そりゃ、うん…」
和葉は優しくはにかむと、「よしよーし」と私の頭を撫でて子供扱いをする。
「ひとりで隠れて泣こうとなんかしないで。誰にも内緒にするから、泣きたくなったらあたしのところにおいでよ。」
ほっぺたに温かい感触がする。
ほろりと涙が零れていたことを、私はその時初めて知った。
拭う度にぽろぽろ溢れてくる涙の粒に、和葉は「あ、あれ！？」と拭いきれなくなって慌てている。私は廊下に突っ立ったまま、頭は妙に冷静だったがしばらくの間しくしくと泣き続けていた。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - そちゃさん» 今回は出すつもりのなかった波瀬兄弟まで首突っ込んできたので畑中と絢瀬妹の性格について色濃くピックアップされた回になりました。感想いつもありがとうございます。励みになります。 (8月5日 4時) (
レス) @page49 id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
そちゃ - まさかのしーちゃん回でこれでやっとみんな救われたのかなって...。しずくと修也くんの関係、歪んでて最高です。次回の修学旅行編楽しみにしてます！ (8月5日 4時) (レス) @page49 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年8月2日 23時
