No.279 ページ9
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「ヒャッホーイ！」
アインがウォータースライダーのスタート地点のトンネルから滑り落ちていく。暗闇の中から聞こえるアインの叫び声に、「無理です、絶対無理です」と絢瀬が顔面蒼白で首を振った。
温水プールとはいえ、人気のこのスライダーはかなり高所からのスタート。しばらく並んでようやく来た順番だったが、直前で絢瀬がびびり散らしてしまった。
「けいと大丈夫だよ〜！一緒に滑ろう？」
「無理、ムリムリムリ！絶対死んじゃうってば！！」
横の柱にぴったりとくっついてしゃがみこむ絢瀬。もう泣きそうだ。しずくも困った様子で、「案外楽しいかもよ？」と誘ってみては眉を下げた。
後ろを振り返る。同じように待っている人がいる。
「じゃあ、けいとは下で待ってて！ボクだけ滑ってくるね！」と、最終的にしずくは一人でトンネルの中に消えていった。
「いいの？けいとくん…」
残された絢瀬に、次の順番が回ってきた恵林が聞く。
「いいんです、僕なんか臆病でどうせなんもできやしないし。てかこんなん滑れないくらいでなんなんです？」
泣きべそかいていじけている絢瀬を見ながら、恵林は遠い昔のことを思い出していた。こんなふうに何かに怯えていることを、一生懸命隠していた時期がある。それはきっと誰にでもある記憶だろうが、恵林にとってその記憶はこれまでの人生の中でとっても大切なものだった。
なぜなら、そんな恵林を救ってくれた大事な親友が、横で笑っている記憶だからだ。
「けいとくん、やっぱり私一緒に滑りたい。私も初めは怖かった。だけど、一緒に滑ってくれる人がいて、今じゃ楽しくて仕方ないんだ。」
ぎこちなく片手を差し伸べて、恵林は笑った。
「滑り終わった時、怖かったなって思ったらそれでいいじゃん。だけど、私と一緒に滑ったことも思い出になるなら、滑らないより幾分か良いと思わない？」
けいとは恵林の乾いた赤い手のひらを見つめて、唇をきゅつと結ぶ。分かるようで分からない、その提案について考えているようだった。
「でも怖くて、動けない…」と、絢瀬は声を震わす。
恵林はハッとしてしばらく黙っていたが、ある時突然片足を踏み出し、絢瀬の腕をしっかり掴んだ。
「けいとくん、はじめの一歩は自分じゃなくていい！誰かに引っ張られてでもいいんだよ！」
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そちゃ(プロフ) - おい氏橋！ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年3月15日 23時
