No.278 ページ8
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「アインと……」
「わ〜！アインセンパイですか？早く会いたいなぁ！」
被せるようにそう言い、目を輝かせるしずくはもう既に可愛らしい水着に着替え終わっている。
一方恵林はプールバッグに手を突っ込んだまま少しも着替えが進んでいない。
「多分、もうアインもあっちに居ると思うから、先行ってていいよ！」と、一向に出ていこうとしないしずくを遠回しに催促する。しかししずくは何故か頑なに「恵林センパイのこと待ってます！」と意志を曲げない。
恵林は跳ねる鼓動を抑えようと嫌な汗を拭い、「うん…」と着替えを再開した。
横からの視線が痛い。見なくたってわかる、視界の端でしずくの両目がじっと恵林を観察している。
まるで下から覗き込んで品定めでもするような丸く鋭い視線だ。
恵林はこれが苦手だった。粗でも探されているような感覚。しかしそれに気付かないふりをしなければならない。気にしていないよう振る舞わなければ、それこそ粗だからだ。
恵林は中学の水泳授業で使っているスクール水着をそのまま着用した。
「い、行こうか！」としずくに下手くそに笑いかければ、しずくは恋人にはにかむような笑みで「はいっ！」と頷く。胸が苦しくなった。
「お待たせー！」と、やはりプールサイドで浮き輪を膨らませていたアインに駆け寄る。「おう！」とにこやかに手を上げたアインの後ろには、案の定絢瀬がひっこんでいた。
絢瀬はしずくを見つけるとぽっと顔を赤くして駆け寄ってくる。
「しずく、似合ってるね、可愛いね！」
「ありがとう、けいと！」
フリルの可愛い白い水着に、しずくの小さな体がフィットしている。幼さの残る足取りがより一層良く際立っていた。
しかし絢瀬は恵林と同様スクール水着だ。「けいとくんは水着買わなかったの？」と恵林が聞けば、「僕なんかが二着も三着も水着を持っていたってナントカの持ち腐れです」と相変わらずな返答が返ってきた。
「そんなことはないと思うけどな…」とそれを否定する恵林も相変わらずだ。そう言うことでしか自分の中の何かに抗うことができない。
しずくはじっと、そんな恵林を見ていた。
恵林もずっと、視界の一番隅でしずくを見ていた。
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そちゃ(プロフ) - おい氏橋！ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年3月15日 23時
