No.305 ページ39
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「木下のやつ、小学校から…などと言っていたよな」
「それが、なによ」
散々泣いたおかげが、美江は少しスッキリした様子だった。いくら寄り添ってみたって戻ってくるのは相変わらず冷たい返事だが、これもいつも通りと思って氏橋は気にせず続ける。
「時が経つのは早いもので、俺は幼稚園の年少の頃からお前が好きだ。」
毎年、美江が一つ歳を取る度に伝えてきた変わらない気持ち。さらりと格好つけて言ってみたって、本当は胸の奥がくすぐられた気分だった。
氏橋は美江を見ている。
美江は氏橋から目を逸らした。
「おい！こっちを見ろ！」と、すぐさま声を荒らげる氏橋。
「ああもう、煩いわね！」
意地っ張りな美江。他の誰かが彼女の機嫌を取るなんて出来っこないと思う。また視線が交わって、氏橋はこくんと唾液を飲み込んだ。
花火など見ている暇はないくらい夢中になれる花が目の前にあるのだ。ずっと昔から一輪だけ、強く気高く咲く花が。
今年こそ、と氏橋は一度深呼吸をして口を開いた。
「俺は宮野のためならなんだって出来るんだ。今日だってあんな大胆なこと、お前じゃなきゃ出来なかったよ。それくらい大切で、一番近くにいたいと思っているんだ。だから、宮野が振り向いてくれるまで何度でも言う、好きだ。」
ゆっくりと時間が流れていくのが分かる。まるでこのまま止まってしまうのではないかというほど、ゆっくりと、静かに流れていく。
美江は唇をきゅっと結んで押し黙った。実に長い間睨めっこをしている。ここで何か喋った方が負けだと、お互いが分かっていた。
負けず嫌いな二人だからこそ次第に縮まる距離。こつんと二人の額がぶつかって、澄んだ桃色の宝石が鼻の先で光っている。氏橋は堪えきれずに、火照った表情で吐息を漏らした。
……負けを譲るのは、いつだって惚れた方なのだ。
「美江、僕とお付き合いしませんか。」
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そちゃ(プロフ) - おい氏橋！ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年3月15日 23時
