No.302 ページ35
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「しーくん、ストップストーップ!美江ちゃんはしーくんの彼女でも無いからね!?」
「許さない、骨折も治っちゃって、蹴り足りなかったみたいだな!」
困り果てた和葉の元に、「どうしたんだお前たち!」と氏橋が戻ってくる。どうやら前田との話は済んだようだ。
「そうちゃん!美江ちゃんが木下くんに話しかけられてるよ、いいの!?」
「な、な、何ィ!?」
ようやく事の重大さに気がついた氏橋。愕然としながらステージ上の美江を見上げる。
美江は木下と何か話しながらチラリとこちらを見る。
「みやの…」と氏橋が縋るように笑いながら手を振ると、美江はフンっとそっぽを向いて、なんと木下と二人でステージを降り反対方向に歩いていってしまった。
ガーンという悲惨な効果音が氏橋から聞こえてくる。
「自業自得だね」と冷たい中村の一言が胸に刺さった。
「……ど、どうすればいいんだ!?待て、何が起こった!?何故宮野は木下と…というより、木下は何故宮野に!?」
「なんだ君、気づいてないの?木下は気の強い女の子がタイプなんだよ。」
「遠回しに言うな!つまりそれは、どういうことだッ!」
中村はムッとして氏橋の額に人差し指をぐにっと押し込む。
「木下は君と同じように、宮野ちゃんが好きなの!」
氏橋の耳には中村のその一言にエコーが掛かっているように聞こえた。ガガガーン!と先程よりも更に大きな効果音が鳴り響き、氏橋はその場にぺたんと座り込んでしまった。
「もうやめて!とっくにそうちゃんのライフはゼロよ!」と和葉が氏橋を庇いながら、聳えるように仁王立ちしている中村に叫ぶ。そんなことをしている間に木下と美江は遠ざかっていく。
「早く立ちなよ、へばってないで追いかけないと!」
中村は一人駆け出した。「ま、待てぇ…」と弱々しく嘆きながら氏橋も這い蹲るようにして後を追う。
「お……面白くなってきたぁっ!」と、和葉はカラコロ下駄を鳴らしながらシャッターを切った。
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そちゃ(プロフ) - おい氏橋!ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (レス) @page46 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2023年3月15日 23時