No.301 ページ34
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「生徒会長……ですよね！よかった、人違いだったら恥ずかしい思いをするところでした。」
誰かが氏橋に声をかけていると思って、中村が振り返る。そこには生徒会の会計係である前田が、これまた華やかな浴衣を身にまとって帯を揺らしていた。
前田はもともと長身であったが、下駄も相まって中村と同じくらいかそれよりも少し高い背丈に見える。
「む…前田か。制服じゃないと、なんだか変な感じだな…」
「それって似合っていないということですか？」
「ち、違う！断じて違う！！その、なんだ。少々恥ずかしいということだ。」
前田はくすくすと笑い、まるで中村たちが見えていないかのように「ではどうですか？この浴衣」と一回転して見せる。ここでも思春期が邪魔をして、氏橋は「に、似合っている…ぞ」と動揺を隠せずにいた。
「ほんとですか？嬉しい！」と前田が大層喜んでもう一度くるりと回った。
いつもきりっと睨みを効かせている真面目な女子生徒がこんなにも可憐に笑っていると、なんだか逆に恐ろしい。ガン無視されていることへの腹いせも兼ねてからかってやろうかと口を開いた時、中村はそれを遥かに上回るとんでもない恐怖を目の当たりにしてしまった。
鬼だ、鬼を見たのだ。
ステージ前方、クラリネットを握ったままこちらに顔を向け、一人だけ燃え盛る宮野美江という鬼だ。
「わっ！」
中村は慌てて和葉の腕を掴み、少し離れた場所に向かう。
「ど、どうしたの急に！」
「宮野ちゃんがめちゃくちゃ怒ってる。前田さんに嫉妬してるんだよ、あの距離でよく見つけたな…」
ここからステージまではかなりある。きっと女の勘とやらが発動して、丁度この悪いタイミングで最悪の光景を見てしまったのだろう。
「ほんとだ…！鬼の形相ってやつだね…そうちゃん早く話終わらせてー！！」
氏橋は満更でもなくデレデレとして前田と楽しく談笑している。中村はため息をつき、呆れ顔で「馬鹿だなあ」と呟いた。
「し、し、し、しーくん！！！！」
ぐいっと服の裾を引っ張られて和葉の方へと顔を向ければ、和葉は顎をがくがくと震わせてステージを指さした。
「＿＿＿＿＿ハア？」
中村は目を疑った。
憤りの炎を盛らせる鬼に近づいていく猛者がいる。木下だ。木下が美江へと接近していくのだ。
「あの野郎、なにヒトの彼女に声掛けてんのさ！」と怒り出しステージへ向かおうとする中村を、「美江ちゃんはまだフリーだから！！」と食い止める和葉。
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そちゃ(プロフ) - おい氏橋！ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年3月15日 23時
