No.274 ページ4
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住宅から離れていけば行くほど、一層蝉の大合唱に拍車がかかったようだった。気づけば足元はアスファルトではなく、土や枯れ草の上を歩いている。
真横に並ぶのは青々とした田んぼ。
「オタマジャクシ！」とアインが水面に指を指した。
「そういえば、秘密基地のオタマジャクシはどうなったんだ？」
「ああ、あの子たちは…」と恵林はつい一週間ほど前のことを思い出す。桐ヶ谷と共にやってきた時だ。切り株の上に置いておいた小さな虫かごの中で、白濁化して浮いていたオタマジャクシを思い出して目を伏せた。
「川に戻したんだ、可哀想だったから。」
桐ヶ谷の言葉をなぞるように答えた恵林に、「そうなのか」と後頭部で手を組むアイン。
ぷっかりと浮かぶ大きな入道雲が近づいてくるような錯覚がする。
「あ、恵林…」と前を行く制服の少女に、控えめな声で呼びかけた里奈。「ん？」と返ってきた返事に「プレゼント、見てくれた？」と続けてはにかんだ。
恵林はスローモーションでゆっくり振り返りながら、顔面蒼白になって制服のスカートのポケットに手を突っ込む。そこから、貰った時と全く変わりのない様子のバースデーカードと小包が出てきた。
「わあ…」と里奈は目を丸くして、珍しく驚いたようだった。しかし直ぐに笑顔に戻ると、「開けてみて。」と恵林に勧める。
恵林は申し訳なさそうにリボンをほどき、でてきた紙束を手に取った。
「かわいい、兎？」
「うん、小さいけど、兎の形の便箋。封筒もついてるよ。」
里奈は嬉しそうに恵林の横に来て、彼女の手元を覗く。
「あのね、恵林。私、口で話すのは苦手だけれど、そういうときは紙に書いて伝えようって思うの。手紙って、本当に伝えたいことを丁寧な言葉で正確に書けるでしょ。」
なんだか物知り顔でそう言った里奈に、恵林は不思議な顔をする。そういえば去年、和葉に対して謝る時にも里奈は手紙を用いていたなと、二人の話を聞いてアインの記憶が蘇ってきた。
「この便箋、一目惚れして買ったんだけども、私が使うよりずっと恵林に似合ってると思って。どうかな…桐ヶ谷くんにお手紙を書いてみるとか。」
「＿＿＿え！」と恵林は肩を弾ませる。
「い、いや！あの人が読むわけないじゃん！桐ヶ谷葵先生ですよ、きっと面倒くさそうにするよ！」
「そうかな…でも、病院で目を覚ました時、恵林からの手紙があったら私は嬉しいと感じるよ。」
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そちゃ(プロフ) - おい氏橋！ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年3月15日 23時
