No.296 ページ29
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「み、宮野ッ！！！」
居てもたってもいられなくなって、氏橋はその場で馬鹿でかい声を出す。「は！？な、なによ急に！」とテンパって美江がキレたが、お構い無しに氏橋は続けた。
「今年の浴衣も、最っ高だーーーッ！！
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿グフォ！」
美江はガツンと躊躇なく拳をお見舞する。
「声がデカい、信じらんない！」
「行きましょ」とスタスタと早歩きで屋台の方へと向かう美江。「何故だ……」と地面にめり込んだまま氏橋が消沈した。
「でも見て、宮野ちゃん耳まで真っ赤だよ」と成果を報告してくれる中村。「本当か……ッ」と氏橋は顔を上げて、割れた眼鏡のレンズ越しに美江を見た。
「やるねぇそうちゃん…あたしも頑張ろーっと」
和葉はその横で、強く闘争心を燃やしていた。
さあ、夏祭りは始まったばかりだ。
＿＿＿＿＿＿
夏祭り会場である総合公園には、中央のステージを囲うようにしてぐるりと屋台が並んでいる。ステージでは常に自治会の催しや市内の学校のイベントなどが繰り広げられていて賑やかだ。
「ステージで吹奏楽部の演奏が七時半からあるの。今年はコンクールも金賞を取って波に乗っているから、私達も参加するのよ。あと一時間くらいは暇だから、屋台をまわりましょう。」
「あたし焼きそばたべたーいっ！」と元気よく手を上げる和葉。「ご飯にしようか」と中村が微笑めば、満場一致で賛成の声が上がった。
「二手に分かれて食料調達し、テーブルベンチのところで待ち合わせないか？」
ここぞとばかりに発言する氏橋。
「いいねー！しーくん何食べたい？」と和葉が乗っかれば「う〜ん、わたあめ」と答える中村。
「なら、私も甘いものが食べたいから中村と……」
「否ッ」と割って入る氏橋。
「な、なによ」
「宮野、俺も甘いものが食べたいんだ。俺と行こう」
「はあ？」
「ささっ」と氏橋に誘われて連れていかれる美江。氏橋はぐりんと振り返って和葉に親指を立てて見せた。
和葉も口角を上げる。これは立派な取り引きなのだ。
お互いがお互いの利益のために働きかけるという、生徒会長と情報屋の夢の協力。和葉も親指を天高く上げる。グッドラックという意味を込めて、氏橋の背中を見送った。
「不自然で逆に怪しいけど大丈夫？」と、後ろで苦笑しながら中村が聞いた。彼はこの作戦に気づいていない。彼自身は、このダブルデートに氏橋と美江をくっつくという目的しかないと思い込んでいるのだ。
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そちゃ(プロフ) - おい氏橋！ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年3月15日 23時
