Ｗデート大作戦 ページ27
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キキキ…と蜩の歌が聞こえてくる。
夏祭り当日の駅前。和葉は呼びつけた氏橋を待ちながら、おろしたての浴衣の裾を気にした。
「地面についてないよね…」
少し踵を上げれば、指の間に僅かな痛みが走る。慣れない下駄のせいで靴擦れしてしまいそうだった。絆創膏を貼ってくればよかったと後悔しながら、行き交う人の荷物を眺める。これから祭りに出向く人と、帰ってくる人が見分けられるようになった。
「わ、悪いッ、遅くなった…！」
ヒーヒー息を荒くして駆けつけた氏橋。「まだ始まってもないのにそんなに疲れてどうすんの！」と和葉は頬を膨らませた。
「で……どうするんだ……ッ」
「もー！」と歩き出す和葉。カランカランと下駄が鳴る。
「肝試しをしようと思ってさ！あたしたちは先に下見して慣れておこうと思います！」
「肝試しィ！？俺苦手なんだよぉ…」
「だからこその下見だっての！」
頼りない氏橋の腕をグイグイ引っ張って横断歩道を渡り、ずっと先の道を進んで夏祭り会場の少し前で暗がりの道に曲がる。太鼓や鈴の音が微かに聞こえてくるが、この道は少し歩けば両脇にお墓が並ぶのだ。
「行くよ…」と、和葉も緊張の眼差しで言った。
頭上の茜も、もう夜の藍色に衣替えする頃だ。練習とはいえ、雰囲気が出ている。
「じょ、情報屋ぁ…」と氏橋の手が浴衣の袖を掴む。
「ちょ、ちょっとそうちゃん！吊り橋効果であたしのこと好きにならないでよね！！」
「ヤバいかもしれん…ここまできてる…」
「ヤバいの！？やめてよ！！あたしもなんだからっ！！」
二人は恐怖か恋か、曖昧なままドキドキと心をふるわせている。思ったよりも長い一本道に目を瞑って早歩きをする和葉。
ようやく終点の神社に辿り着けば、周りは木々が生い茂る秘密基地周辺の田園に出た。二人はゼーハーと呼吸を整えて一休みすると、「ほ、本番は怖がらないように頑張ろう……」と言い聞かせた。
氏橋はその場にしゃがみこみ、「了解だ……」と聞こえないほどの小さな声で返事をした。
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そちゃ(プロフ) - おい氏橋！ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年3月15日 23時
