No.294 ページ26
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「そうちゃん、この前のデートのお誘いフラれちゃって困ってたんだ。二人きりじゃなくても、みんなと行けば美江ちゃんも来てくれるかなーって!」
「なるほど…」と氏橋を見下ろす中村。話が早いもので、「俺は宮野ちゃんを誘えばいいのかな?」と何もかもお見通しだというふうに笑いかけた。
「そうしてくれると助かる…!しーくんからの誘いなら、美江ちゃんもきっと来てくれるよねっ」
頷きながら和葉は心の中でガッツポーズをする。これでダブルデートは確定したようなもんだ。あとは氏橋と口裏を合わせて、二人っきりになれるタイミングを作ればいい。
「それで、三城ちゃんは俺とデートしてくれるってわけね。」
「うんうん……って!やっぱりバレバレかぁ…」
中村は微笑んで「誘ってくれて嬉しいよ」とお礼を言う。和葉は少し恥ずかしそうにはにかんだ。
「あの…他に誰か誘う?」と、和葉は寂しげに聞く。本当はそんな事言いたくもないくせに、何故か口から出ていくのだ。
中村はじっと和葉を見透かすようにして、「俺は君がいれば充分だよ」と答えた。
「…えへへー、嬉しいなっ!」
和葉は頬をかいて笑った。
「あたし、明日が楽しみになった!そうだ、新しい浴衣も買ってもらったの、早くしーくんに見てもらいたいなぁ…」
そう言ってもじもじと俯く和葉に、中村は「楽しみにしてるね」と優しく笑いかける。「…うんっ」と頷いて、和葉はパタパタと部屋から出ていった。
中村が後を追いかけようとすると、階段の下から「ダメ!」と和葉の声がした。
「あたし今顔真っ赤だから、見られたくない!そうちゃんのことよろしく、あたし帰るね!」
まるで嵐のように去っていった和葉。ふぅ、と一息ついて中村が階段から降りてくると、待ち構えていたかのようにリビングの扉から絢瀬としずくが顔を覗かせた。
「うわ〜悪趣味。聞いてたの?」と中村が笑った。
「しーくんセンパイ、罪な男ですね〜!和葉センパイを骨抜きにするつもりですか?」
「ナカムラシオン、人たらしでロクデナシ。」
「韻を踏むな」と絢瀬の額を指でつつく中村。リビングに入れば「やあ〜ロクデナシくん」とソファからにょっきり手が伸びる。
この家にいる限り、兄とその傘下にいる絢瀬双子から一生いじられ続けるのだろうかと絶望した中村だった。
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そちゃ(プロフ) - おい氏橋!ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (レス) @page46 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2023年3月15日 23時