No.291 ページ22
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「あ！」と、いきなり大声を上げたアイン。
「しまった！俺、手紙渡すの忘れた！！」
そう言って青ざめたアインの手のひらには、先程のくしゃくしゃになった便箋が握られている。
「もう、ばっかじゃないの！」と美江が暑さも相まって怒り出せば、「うるせー！お前がさっき余計なこと言ったからだろ！」とアインも売り言葉に買い言葉だ。
「あぁ！俺、今からもっかい行って手紙置いてくる！」
「先帰ってて！」と来た道を駆け戻っていくアイン。「フン！行きましょ」と長い髪を払って歩き出した美江に、おずおずとみんながついていく。
「アイン、やっぱりちょっと変…」と、里奈が振り返って小さく呟いた。
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午後の、一番気温が高い頃。
ガラガラ…と、少し遠慮がちに桐ヶ谷の病室の戸が開かれた。
「あー…葵」
アインはぎこちなく笑って桐ヶ谷との二度目の再会を果たすと、「これ、起きたら読んでくれ」と言って便箋を枕の脇に置く。きっと後で様子を見に来た看護師が場所を移してしまうだろうが、それでも恵林の手紙の横に一緒に置いておくことにした。
アインは汗を拭う。用事は済んだが、足は戻らない。
「手紙、恵林と一緒に考えて書いたんだ。恵林はお前のこと、自分のせいなんじゃないかって悩んでる。でも、手紙書いたら元気になってたよ！だから読んでやってくれ。それと…」
カチ、カチ…と時計の秒針が進む音がする。扉の向こうでは人が忙しなく行き来し、病人も医者もごちゃ混ぜになって院内に溢れていた。
けれど病室は静かだった。桐ヶ谷の寝息も聞こえないくらいで、アインは少し心細くなった。
「俺、みんなに言えないことが出来たんだ。葵、寝てるままでいいから聞いてくれないか？」
返事はない。だが、今はそれにホッと安心する。
アインは深呼吸をして、優しく笑いながらぽつりぽつりと話し出した。
「俺、アメリカの私立高校にスポーツ推薦受けてるんだ。結構有名な学校でさ、嬉しくて、これで胸張ってみんなと並べるって思ってオッケーしちゃったんだ。」
冷たい白い壁、白い床を見つめる。やはり返事は返ってこない。
「でも俺バカだから、今更気づいたんだ。アメリカ行ったら、みんなとお別れじゃんかよ…」と、項垂れれば、長い前髪が視界を遮った。
「葵、どうしよう」
消え入りそうな小さな助けが、眠っている桐ヶ谷に届く。
きゅっと苦しくなる喉の奥を抑えて、アインは声を押し殺した。
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そちゃ(プロフ) - おい氏橋！ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年3月15日 23時
