No.289 ページ20
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ちょうど氏橋が完全敗北を嘆いた頃、恵林のメイクを終えた美江が「それで氏橋は一体なんの用で来たのよ」と話を戻した。
氏橋は急に動揺しだして、「ゥエッ？」と裏返った声で振り返る。呆れ顔の美江と目が合った。
「その、なんだ…んんッ。」
みんなの注目を集める中、一度咳払いをして姿勢を正す。そして美江の前まで正座のままずりずりと移動し、「み、宮野！」と彼女の名を呼んだ。
「い、いやッ、宮野美江さん。夏祭り、僕とデートしてくれませんかッ！」
きっちりかっきり九十度に曲がった腰。片手は美江の方へと向いている。「キャッ！」と和葉が、顔を覆った両手の指の間から氏橋を見下ろしていた。
「ば＿＿＿＿」と美江は顔を真っ赤に染め上げてたじろぐ。
「ばっっかじゃないの！！」
「エェ！？」と顔を上げる氏橋。思ってもみない返事に戸惑いが隠せない。美江は両拳を腰の横でふるふると震わせながら、鬼の形相で片足を踏み出した。
「桐ヶ谷が入院してるって時に、アンタってホント、最っ低！」
沈黙。
グラスの中の氷が、コロンと音を立てた。
「＿＿＿＿＿＿＿＿＿えェェェェエ！？！？」
＿＿＿＿＿＿
「なんだ、知らなかったんだ〜」と赤レンガの道を歩きながら、中村が氏橋にニタニタと笑いかける。
「知らなかった、知らなかったぞ！なんで言ってくれないんだ馬鹿野郎！」
「だってこんなに人数居るんだもん。誰か一人くらい連絡回してると思ってさ〜」
中村は後ろを振り返る。ワイワイガヤガヤ、晩餐会メンバーが総出で後に続いていた。氏橋は「桐ヶ谷…」と落ち込んで肩を落とす。まさか自分の知らない間に大変なことになっていたなんて。
総合病院までの長い道のりは、暑さのせいで子供たちの体力を徐々に奪っていった。車の走る車道の先には、ゆらゆらと揺れる蜃気楼が見える。そんな中、恵林だけ妙に洒落込んでいることに疑問を覚えた氏橋に、「恵林は俺の姉って設定なんだ」と訳の分からないことを言い出す中村。
「私、面会拒否されてるんだ…それになんやかんやあって、受付する時の私の名前が中村紫苑になってるからよろしく…」
「ますます意味がわからん…そんなの通じるわけないだろうが…」
「それが案外上手くいったのよね」と美江。
「まあ見てれば分かるよ」と中村に連れられ病院に入ると、氏橋はみんなと一緒に受付カウンターに向かった。
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そちゃ(プロフ) - おい氏橋！ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年3月15日 23時
