検索窓
今日:23 hit、昨日:4 hit、合計:2,389 hit

No.286 ページ16

.

「いいの?帰国してからまだ一度も…」と里奈はアインを心配するように言う。

「いいんだって、それに俺も手紙書きたいし!」

鼻の下を指で擦って照れくさそうにはにかむアイン。恵林は眉を下げて少し笑うと、「ありがとう、アイン」と言って彼の気持ちに感謝した。

三人はそれから恵林の家に向かい、リビングで顔を突合せて手紙を書き始めた。もっとも、里奈は恵林の手助けをするだけであって、桐ヶ谷に文を綴ることは無かったが。


____



「で…で___できたー!」

「ヨッシャー!」とアインが拳を上げる。日も暮れた夕方、ようやく恵林たちは桐ヶ谷に手紙を書き終えることが出来た。

「早速渡しに行こう!ああだめだ、明日!明日しーくんたちと一緒にお見舞いに行こう!」

「おう!」

里奈はその様子に微笑んで、「よかったね」と手を叩く。「里奈は?里奈も行くでしょ?」と恵林が振り返れば、「えっ」と面食らったような顔をした。

「明日、葵のお見舞い!」

「えっと…私は…」

キラキラと輝く期待に満ちた恵林の顔。里奈は少し悩んで、「じゃあ…行こうかな」と苦笑した。



お開きとなった手紙書き会の後、恵林は二人を家に送っていくと言って一緒に自宅を出た。

里奈を無事送り届けた後、アインと一緒にマンションの外へ出る。日は沈んだが、まだ蒸し暑い。
ジリジリと夏の虫の合唱を聴きながら静かに歩いていたが、不意にアインは横を歩く恵林に「あのさ」と声をかけた。

「あの……俺……」

恵林は思う。アインは里奈に言おうとしていたことを、今自分に伝えようとしているのだろうか。黙っていた方がいいかと思い、彼の言葉の続きを待っていたが中々口を開かない。

「俺、実は…_____ずっとトイレ行きたくて!」


トイレ?


「はあ!?そんなに溜め込んでたのになんだよ!!」

「そうだよ溜め込んでたんだよ!色々と!!」

誰が上手いこと言えと、と文句を言いたかったが、恵林が口を開く前に「マジヤバいから、じゃあな!!」と急に駆け出して行ってしまったアイン。

「あっ!ちょっと!!」と追いかけてみても全く距離が埋まらない。流石、総合体育大会ぶっちぎり優勝なだけある。

「なんなんだ、あいつ…」と頭をかいて、恵林は仕方なく帰路へ戻った。



.

残暑、眠りの神様にて。→←No.285



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (6 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
15人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

そちゃ(プロフ) - おい氏橋!ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (レス) @page46 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2023年3月15日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。