No.281 ページ11
.
四人の中で、唯一絢瀬だけがアクティブなことが苦手だったので、一日が終わる頃には彼の顔はしなしなになっていた。
絢瀬が駄々をこねる度、「お前はちっちゃいからなー！俺が守ってやる！」とアインが豪快に笑ってみせたが、「いやアンタにだけは言われたくないです」と更に不機嫌面になるのがお決まりだった。
行きたかった岩盤浴にも行け、夕方には施設内のレストランで美味しいうどんやかき氷を食べて、夏休みの一ページに相応しい充実した一日になった。
「恵林センパイ」と帰り道、しずくが声をかけた。
「えっ」と、まだ生乾きのポニーテールを揺らして振り返る。
「けいとのこと、いつもありがとうございます。あと、今日は一緒に遊んでくれて嬉しかったです！」
驚いた。まさかこんなにも素直な言葉が贈られるなんて思いもしなかったので、恵林は大袈裟にテンパった様子で「そ、そんな！」と両手を振った。
しずくはやっぱり恵林の内面を見透かしたように笑い、「ボクも晩餐会に入りたいな」と軽快な声色で言ってのけた。
「え……」と固まる恵林。アインとけいとが先を歩いていてよかった。こんなこと聞かれていたら、きっと悪いことになる。
「普通に中学生してたらなれない、みんなとちょっと違う存在って憧れちゃいますよね！それに面白くて優しいセンパイ達ばっかで、楽しそう〜！」
細い指を組んで夢焦がれたような顔をするしずく。恵林はかける言葉を失った。
「…でも、私たち学校の嫌われ者だし、晩餐会のことよく思ってない人の方が多いのが事実だよ。」
きっと何を言ってもバレバレであろう。恵林はしずくを仲間に入れたくないのだ。
「しずくちゃんは、三年生の中でも話題に上がるくらい人気者なんだよ。そのままで充分、私にとっては憧れだけどな…」
目を逸らす恵林。しずくの大きな両眼に吸い込まれそうになるのが怖かった。
しずくが晩餐会メンバーになりたいというのは本当だろうか。もしそうなら、恵林に言うより先に絢瀬や中村兄弟などに零していそうな話だが、これまで誰もしずくを勧誘しようと言わなかったということは、彼女はこの話を初めて打ち明けたことになる。
否、その旨を匂わせる行動や言動は何度かあったが全て見て見ぬふりをしていたのも恵林だ。しかしこうしてダイレクトに伝えられては、とうとう逃げることもできない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
そちゃ(プロフ) - おい氏橋！ついにやりやがったな...と、友達目線で読んでました。今回のお話はキャラのらしさ全開で読んでて楽しかったです。アインくん不穏でしたが彼ならきっと乗り越えられると願ってます....続き楽しみにしてます。 (2023年3月22日 21時) (
レス) @page46 id: 970cecf5ba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2023年3月15日 23時
