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No.181 ページ10

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「あなたね、そうやって氏橋に八つ当たりする癖、いい加減やめなさいよ」

「幼稚園の頃からまるで変わってないじゃない!」と付け足した美江に、「そっか、三人は幼馴染だったのかっ」と和葉は感心する。

和葉のその反応に更に気を悪くしたのか、中村は「余計なこと言わないでくれる〜?」と美江の額を指でつついた。

「中村ッ!お前、何が不満なんだッ!」

「いや別に、不満とかないし。
でもホントのことじゃ〜ん?あおちゃんはテストの結果に傷心中なんだよ。」

「学年一位になれなかったのだって、そうちゃんのために時間を割いたせいで自分が勉強出来なかったからなのかも。」と中村は更に氏橋を追いやるように口を尖らせた。

しっかりとそれに衝撃を受けてくれる氏橋も氏橋だ。
こんな簡単に手のひらで踊らされて。それだから中村のおもちゃにされるのだ。

「大丈夫よ、さっき桐ヶ谷と喋ったけど、いつになくウキウキしてたもの。」

「師匠がウキウキ?」と和葉がバカにするように笑ったので、そのタイミングで先程の伝言を済ませた美江。

彼女の横で終始つまらなそうに話を聞いていた中村は、以降会話に参加することなく授業を終えた。



部活の時間になっても中村の機嫌は元に戻らなかった。
更に恵林もまた落ち込んでいるのが丸わかりで、少し前の、全く集中できていない状態に戻ってしまったことにより美江のイライラが加速した。

合奏中、いい加減なピアノとぼんやりしたフルートソロに挟まれて、美江のクラリネットは呆気なくリードミスをしてしまった。

裏返った金切り音に修也の指揮がピタンと止まる。
やってしまったと美江は冷や汗をかいたままクラリネットを構えて動けなくなった。

「…う〜ん?」

修也はなんだか締りの悪い声を漏らして不信げに美江を眺める。

「君ら、なんかあったの?」

そして、恵林と美江、中村を交互に指揮棒で指した。

中村は不貞腐れた様子で「別に?」と兄に一言返したが、恵林に至っては何も聞いておらず宙を見上げてぽかんとしている。

美江は「すみません!」と頭を下げたが、内心は失敗した罪悪感よりも憤りの方が遥かに勝っていた。

「お〜い、恵林ちゃ〜ん。」

「戻っておいで〜」と修也は恵林の前で指揮棒を細かく振る。

抜け殻のような恵林はハッとして意識を戻すと、「あ、はい!なんでしょう!」と修也にかしこまった。

そらを見て美江は先が思いやられるような、そんな疲労感を感じたのだった。




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作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2022年4月14日 17時

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