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No.180 ページ9

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午後の授業は修学旅行の決め事を班で行う時間だった。
美江は筆記用具としおりを持って、廊下側の1番後ろの席に座る。

もう既に集まっていた氏橋と和葉、そして中村は美江を迎え入れて机を突き合わせた。

「えー、今日決めるのはあれだな。一日目の自由行動の計画だ。」

氏橋はそう言ってしおりをたてると、中指で眼鏡をスチャッと持ち上げた。
「どこ行くんだっけ?」と頬杖をついた中村が素っ気なく聞く。

「山梨だ___って、それくらい把握しておけッ!」

美江は……というより、和葉も中村の様子がいつもと違うことに気がついていた。
珍しくむすっとして口ぶりもまるで桐ヶ谷のように淡白だ。

大方原因は予想出来た。
朝、木下のことで先生から怒られたことが気に食わないのだろう。

「まず学校からバスで出発してお昼頃に到着する。
その後大きな公園でレジャーシートを敷いて弁当を食べるんだが…」

そんなこと気にせず、氏橋は「公園は広く、何区画かに分けられる。俺たちはどこで食べようか。」と続けて顔を上げた。

「はいはいはーいっ!あたし、アイン達と同じ場所で食べたーいっ!」

和葉が大きく手を上げる。
「いいわね!そうしましょうよ!」と美江も賛成した。
そのまま美江は席をたち、恵林達の班へと足を進める。

そして、何やら話し合っている恵林の背後まで行くと「ねえ!」と脅かすように声をかけた。

「ウオッ!なんだよ宮野!」

「なんであんたが驚くのよ。」

美江は呆れた顔でアインをじっと見つめた。

「それより!あなたたち、どこの区画でご飯を食べるか決めた?」

「あっそうだった!葵、どこにしよう!」

パチンと手を打って桐ヶ谷に助けを求める恵林。
何故か桐ヶ谷は旅先の話にはノリノリで、「A区画に決まってる。小川も近いし高台で見晴らしがいい。」と地図を広げて断言した。

美江は自分の班へと帰り桐ヶ谷の言葉をそっくりそのまま班員に伝えようとしたが、どういうわけが氏橋が駄々を捏ねていた。

「ちょっと!何騒いでるのよ!」

「中村が酷いこと言っていじめるんだッ」

「いじめてないよ〜」

美江は眉根を寄せて和葉に訳を訊いた。

「しーくんがね、桐ヶ谷くんと同じ場所を選んだら桐ヶ谷くんに嫌われちゃうんじゃない?って、そうちゃんに言ったの。」

「桐ヶ谷がテストの点数のことでずっと俺を恨んでるって!」と美江に泣きついた氏橋。

「そんなわけないじゃないの」と美江はそれを一蹴りし、ムッとして中村を睨んだ。



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No.181→←暗影岐夏、敵と敵。



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作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2022年4月14日 17時

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