No.201 ページ33
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列の最後尾に座っていた美江に、「楽器はステージの上よ！」と教えてもらった恵林は、運動部が決意表明をしている途中に割り込むなんてことは到底できず、沢山の荷物を抱えたまま結局美江の後ろに座り込んだ。
一人一人の声明に拍手が上がる。
恵林はぼんやりそれを眺めていた。
しばらくして、バドミントン部の部長としてアインが壇上に上がると、「頑張れー！」という声が全校生徒の中からちらほら聞こえてきた。
アインはマイクを握り、恥ずかしげに「ありがとう」と笑ったあとにバドミントン部の紹介を進めた。
そして部員全員を整列させ、「必ず優勝して、トロフィーを持って帰ってきます！」と大きく一礼した。
頭上の扇風機の風が当たる。
恵林は揺れる前髪を気にしながらアインに拍手を送った。
それからしばらく、運動部の発表は続いた。
最後の砦として陸上部がやってくると、片足を怪我した部長の木下に生徒たちはザワついた。
「陸上部です！よろしくお願いします！」と松葉杖のまま木下は挨拶をした。
マイクは横の部員の一人が持ち、木下の口元にセットしてあげている。
木下は部員がどの種目で活躍するのかを一通り述べた後に「僕はこの通り、足の骨を折りました。」と続け、それを皆静かに聞いていた。
「僕は最後の大会で、自分が走れなくなるなんて思わなかったです。正直悔しい。けれど、ここにいる部員達が僕の思いを継いで戦ってくれる、そして！」
木下は後ろにいたアインの肩を抱いた。
「鈴原くんが僕の代わりに、男子1500m走に出てくれます。僕が頼みました。」
木下はマイクをアインの方へと指示する。
アインは緊張している様子でマイクを受け取ると、「木下くんの期待に応えられるよう、精一杯走り抜いて来ます！」と頭を下げた。
全校生徒は騒然とした様子を見せたが、木下はそんな皆に向けて声を張り上げる。
「これまで放課後、鈴原くんはずっと僕と練習をしてきました。僕が嫉妬するほど、彼は足が速い。僕は、この3年間の全てを彼に託そうと思います！」
マイク無しで響き渡った彼の気持ちは、全校生徒には充分過ぎるほどに行き届いた様だった。
ぽつぽつと鳴り出した拍手は瞬く間に大きな花のように咲き、勇敢な二人を称えた。
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2022年4月14日 17時
