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No.198 ページ30

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遅刻ギリギリで登校した二人だったがその後すぐに体育館に移動となり、運動部のアインは「じゃあな!」と言って先に出発してしまった。

恵林はまだ少しどきどきしたまま廊下に背の順で並んでいた。

前方にはテニス部の里奈が見える。
そういえば、里奈は大会には出ないと前に言っていた気がする。

丁度その時、「ねえ!」と小声で真後ろから呼ばれたような気がして恵林は驚いて振り返った。
美江が怖い顔でこちらを見ている。

「あなた朝練出てないわよね?」

「え…うん」と恵林は神妙な面つきで頷いた。
自分が朝練をサボっていることなんてもはや誰も咎めないだろうと思っていたので、何故いきなりそんな怖い顔をするのか恵林には理解できなかった。


「…今日の壮行会、最後に吹部のコンクール曲の演奏もあるのよ。」


しかし、その一言で恵林は瞬時に全てを悟った。

「楽器、体育館に出してないわよね?」

「だ、出てないです!」

「すぐに出してきて!」

恵林は慌てて列から外れると、廊下を駆け出して行った。
後ろで美江が「楽器と譜面台ねー!」と叫んでいる。

恵林は走りながらもう少し吹部にも一生懸命になろうと反省していた。
どうも自分だけがふよふよと地に足つかず状態で、みんなが精一杯練習しているのを見てもピンとこないのは、きっと一度の練習を疎かにしているからなのだと恵林は気がついた。

部活に参加しても極力個人練習を選んでしまっては意味が無い。
曲は部員全員で演奏するのだから、もっと多くの人と関わり、楽器を吹かなければならないのだ。


ようやく音楽準備室前についた恵林は暑さと疲労で息を切らしながら思いっきり戸をガラッと開けようとした。

しかし、鍵が掛かっていてビクともしない。
良く考えれば部活の時間でもないのに開いているわけが無いのだが、半ばダメ元ですぐ横の音楽室のドアノブを回してみることにした。


「あ、開いた……」と呟いた恵林に、「待ってたよ」と何者かが返事をした。


驚いて部屋の中を見渡すと、まるで恵林の登場を分かっていたかのように笑う修也が、黒板の前で何やら難しそうな本を読んでいた。




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作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2022年4月14日 17時

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