No.196 ページ27
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「サンキュー、俺も鈴原のこと好き！」と木下は笑った。
「お前は中村に優しくしてもらえて良かったじゃん。
小学校の時に出会ってたら、多分虐められてたぜ。」と続けた木下に、「なんでだよ？」とアインは首を傾げた。
「だってお前は、俺と同じく背が低いから！」
一瞬ぽかんとしたアインはハッとして「なにをー！！」と拳を振り上げて怒った。
木下は「はははっ！」と今日一番の笑顔を見せ、「でも、羨ましいよ！」と松葉杖で三角コーンを蹴飛ばした。
「俺だって中村が意地悪じゃなくて、優しくて良い奴だったら良かったのにってずっと思ってたから。
正直、イケメンなのも気に食わないしああ見えてあいつ運動も得意じゃん？友達にそんな奴いたら最高だよなって、たまに思っちゃうわ。」
懐かしむような、まつ毛を伏せて俯いた木下の寂しげな笑みが脳裏に焼き付いていく。
これが答えだとアインは確信し、「そう思えるなら、そうなれるよ！」と木下に迫った。
「いやいいんだこれで。」
しかし、木下から返ってきた言葉はあまりにも端的で、サッパリしていた。
「俺はあいつが嫌い、あいつも俺が嫌い。俺らはその関係が心地いいんだよ、きっと。」
「今更仲良くなんて反吐が出るしな！」と豪快に笑う木下に、アインはやるせない顔で「でも…」と言葉を探す。
「俺は晩餐会のみんなとお前らの仲が悪いのが嫌なんだ…俺は色んな人と仲良くなりたい…」
恵林には上手く言えなかったことが、すんなりと木下の前で出てきた。
アインはそれにびっくりしつつ、心の中が少しだけ軽くなったことに安堵する。
「恵林とも木下とも、しーくんとも仲良しでいたいんだ…」とアインが肩を落としたので、木下はしばらく黙って何か考えていた。
「鈴原、言っておくけど、俺は晩餐会自体は嫌いじゃないぜ。」
「え？」とアインが顔を上げる。
「そりゃ前までは嫌だったよ。変人の集まりだし、なんせ中村がいるからさ。でもこの前、畑中恵林が俺が階段を下るのを手伝ってくれたんだ。」
「あんなに酷いこと言ってた人間を助けるって、そうそう出来ないだろうし」と木下は俯いたまま言った。
「変人は変人だけど、嫌なやつではないって思った。
俺はお前に大会に出て欲しいと依頼して良かったと思ってるよ。」
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2022年4月14日 17時
