No.190 ページ20
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「だってデート自体はオッケー貰えてるんでしょ?それってもうほぼ両想い確定じゃんっ!」
ノリノリな和葉に、氏橋は「確かにぃ…」と乗せられていた。
「じゃあその流れで告っちゃおーっ!!」
「こ、告っちゃうかーッ!!」
なんて単純なんだろうか。
二人は大喜びで体育館から出ていった。
「いやしかし宮野をどこに連れていこうか」と誘拐犯のようなことを言う氏橋は、簀子を渡りながら気持ち悪いくらいニヤニヤしている。
「そりゃあもうプールだったら美江ちゃんの水着が見れるよ!」
「み、水着だと!?スク水も好きだが、宮野ならどんな水着を着るのだろうか…」
「そうちゃん、気持ち悪いよ!」と和葉もスキップをしながら校舎に入っていった。
「普通にショッピングモールとかもいいよねえ!あーん!あたしも彼氏欲しい〜〜っ!」
「バッカお前!俺と宮野はまだ恋人じゃないっつーの!」と、もはや誰か分からない口調で氏橋は和葉を肘で突いた。
「だが、やはり忘れちゃいけないのは夏祭りだよな!」
氏橋は手を合わせてまるで乙女のようにまつ毛を伏せる。
「宮野の可憐な浴衣…去年も最高に美しかったが、毎年違う宮野の浴衣を見るのが俺の夏の楽しみでな…」
「しかも宮野の誕生日が毎年夏祭りと被ってるんだ…そして俺はその日、必ず宮野に告っている……」と氏橋は夢見心地で続けた。
「で、なん連敗してるのー?」
「小学生の頃からだから____8連敗だ……ッ」
和葉の心無い一言で夢が覚めた氏橋。
がくんとその場に膝から崩れ落ち、冷たい床に手をついて心底落ち込んでいる。
「じゃあ、今年は成功させなきゃねっ!」
和葉は氏橋の横にしゃがみこんで笑った。
氏橋は顔を上げて、「…ああ!」と強く頷く。
「そうと決まれば待ち伏せだッ!吹部の練習が終わり次第、宮野をデートに誘ってやるッ!」
氏橋は勢いよく立ち上がって廊下を駆け出した。
それを追いかけても良かったが、和葉はなんとなくその場にとどまった。
校庭からの運動部の掛け声。
ボールの転がる音。
風と、蝉の大合唱。
こんな暑い日には、和葉の膝の傷がじんとよく傷んだ。
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作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2022年4月14日 17時