No.184 ページ13
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「あんたって弱虫!言いたいことあるなら直接本人に言えばいいじゃない!」
「ええ宮野ちゃん!?」と中村が慌てて振り返る。
あんなに懸命に自分の愚行を止めてくれた彼女本人が挑発に乗ってどうするんだ。
中村は冷や汗だらだらで本気で困った顔をした。
「昔のことほじくり返して!そんなんでしか言い返せないわけ!?」
木下は、何故か中村よりも激昂している美江にたじろぎ、「え、あ?」と困惑する。
彼の連れが「お前だって女子のこといじめてんだろ!」と美江を指さすが、美江は「はあ?一度もいじめたことなんてないけれど!」ともはや暴論で突き返した。
続けて美江はフン!と強気に笑い、「もしかして、可愛い中村が好きなのかしら?」と木下に詰め寄った。
「はあああ!?そんなわけねーし!男のくせに髪伸ばしてたのがキモイって言ってんだよ!」
「あらそう。中村はあなたと違って顔がいいものね。長髪でも美形ときたら嫉妬もするわよね!」
「一応言っておくけれど、あんたは不細工なんだから髪を伸ばそうとなんてしなくていいわよ。髪を伸ばしても中村のような美少女にはなれないんだから。」と鼻高々に嘲笑う美江に、周りの女子が呼応した。
「中村くん、かっこいいもんね。」とそこかしこから聞こえる声に、木下はギョロギョロ視線を動かして歯を食いしばる。
当の中村というと、頭を抱えて「もうやめて…」と羞恥で廊下の端に蹲っていた。
「あーもうなんなんだよお前ら!"あの時"散々俺らのこといじめておいてまだ足りないのか!クズめー!」
木下はそう叫んで松葉杖をぶんぶんと降り出した。
彼の友人は「お、おい、落ち着けって!」と彼をなだめるが聞こえていない。
ヤケになってワーワーと喚く木下の松葉杖が壁にガツンと当たり、「キャー!」と女子生徒が悲鳴をあげてしゃがみこんだ。
身の危険を感じた生徒たちは教室に逃げかえり、しばらくして暴れている木下を先生が抑え込んだ。
「許さん!許さん許さん許さーーーん!!」と叫びながら連行されていく木下に、美江はびっくりした様子で突っ立っていた。
「な、なによ…そんなに怒んなくたっていいじゃない…」
ちょうどその時。
近くにいたアインが騒ぎを聞きつけてやってくると、廊下の端っこで顔を覆いしゃがみこんでいる中村が居たので慌てて駆け寄った。
「おい!しーくん!大丈夫かよ!」
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作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2022年4月14日 17時