No.174 ページ2
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アインが晩餐会メンバーとして恵林たちの味方でいることは確かだ。そこに強い絆もあれば、信頼もある。
しかしそれは、外の世界との接触を断ち切るというわけではないとアインは思っている。
以前は学校という大きな世界に反逆するテロリスト集団のような鋭さがあったが、今は違う。
晩餐会は、少しずつ周りから認められ、外の世界と交流し、打ち解けあっていかなければない。
「こんなところにとどまるようなやつじゃないだろ、お前は。」と、木下から言われた言葉を思い出したアイン。
その言葉の意味がよく分からないまま差し出された手を取ったアインだったが、もしかしたら間違えたのかもしれない。
外の世界にいる木下とも、晩餐会の仲間たちとも、どちらとも親しい友人関係でいたいアインとは裏腹に、彼が思うより双方は仲が悪かった。
「どうしてどっちかを選ばなきゃなんねーんだよ」
ぼそりと呟いたアインの寂しげな一言が、夏の宵に消えていく。木下の手を取ったアインは、もう晩餐会には居られないのだろうか。
「＿＿＿＿＿ちょっと！何してんの！！」
その時だった。
理科室の外から女性の先生…恐らく伊藤先生がそう叫んだため、アインは脱いだジャージを乱暴にナップザックに詰め込んで振り返った。
「ぎゃ」と絢瀬がビビって耳を塞ぎしゃがみこむが、彼だけでなくみんな驚いたような顔をして廊下を見つめている。
「な、なんだ？何があったんだ？」と氏橋は迷いながらも廊下に出た。しかし勇気が出ずその先にどうも踏み込めない。
「なにか聞こえる、少し遠くだけど…誰かが泣いてるみたいな…」
アインは耳を済ませながら氏橋の横へやって来ると、そう言ってスタスタと駆け出した。
「お、おいッ！鈴原！」と氏橋が後ろから呼び止めるが、アインの足は止まらない。
着替えるからと言って置いてきてしまった木下が、どうも気がかりだった。
次第に大きくなる悲鳴のようなものがアインの心をざわつかせる。少年の声だ、やはり木下か？
そして、とうとうアインは一階の薄暗い渡り廊下までやって来ると、そこに立ち尽くしていた恵林の姿を真っ先に見つけて口を開こうとした。
しかし、開いた口が塞がらない。恵林の先で何者かが伊藤先生によって担がれようとしている。
その辺には松葉杖が二本共無造作に転がり、担がれようとしている少年の足にはギプスの白い塊が見えた。
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作者名：えりんぎ※息を吸う | 作成日時：2022年4月14日 17時
