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鬼決め ページ1

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第一理科室。
月が昇り、校庭からは虫の鳴き声がジリジリと聞こえてくる。

日中の気温はかなり和らいだが、まだどこか蒸し暑い。
そんな中、扉がガラリと開き薄暗い廊下から鈴原アインが単身でやってきたので、教室に残っていた晩餐会メンバーは皆一斉に顔を見合せた。

アインに会いに行ったはずの恵林と和葉の姿が見えない。鉢合わせなかったのか?

「ただいまー!
わりぃ、里奈!今日は恵林と二人で帰ってくれ!」

開口一番、アインがそんなことを言って里奈の前で申し訳なさそうに手を合わせたので、彼女は驚いて「え…」と高い声を漏らした。

「俺がいないと、木下が一人になっちゃうからさ。」

「里奈には、恵林がいるだろ?」とアインは里奈の顔を覗き込むようにして様子を伺う。それを、周りのメンバーたちが不安げに見守っていた。

「で、でも…!」と里奈は恵林の気持ちを汲んで何か言おうと頑張っていたが、丁度よくそこに和葉が帰ってきた。

「アインったら足速すぎ…なんで追いつかないワケ?」

ゼーハーと呼吸を整える和葉。
「恵林は?」と中村が即座に聞いた。

「えっ?」と和葉は振り向いた。

「あ、あれ?ついてきてると思ったんだけど…
_____えっ、しーくん!?」

突如理科室を飛び出していった中村に、和葉は目を丸くして声を上げる。しかし彼は、踏みとどまることなく駆け足で暗い廊下の奥へと消えてしまった。

「どうしたんだ?」と首を傾げるアイン。
「それよりあんた、先約ってのがあるでしょうが!」と美江が口を挟む。

「はあ?どういう意味だよ!」

「先にあんたと帰る約束をしていたのは里奈と恵林でしょ、どうして木下と帰るのよ!」

里奈の代わり、というのが正しいか。
美江が、口下手な彼女に変わって気持ちを代弁してやったのは、美江にとって里奈が大切な友人だからだ。
その友人の気持ちも分かってやれない男が、好きだとか守りたいだとか。
アインが里奈に向けたこれまでの言動に、怒りが込み上げる。

里奈は言い合う二人の間で、何か言うべきかと戸惑いながら視線をいったりきたりさせていた。

「じゃあお前は木下と一緒に帰ってくれるのかよ!」

「それは…」と口ごもる美江。

「俺は誰かが一人でいるのは嫌だ。それに俺は、友達になろうとしてくれるやつを嫌ったりはしない!」

そう言いきって拳を強く握ったアインは、出来てしまった沈黙から逃げるため、着替えを持って教室の端へと移動した。



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No.174→



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作者名:えりんぎ※息を吸う | 作成日時:2022年4月14日 17時

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